キリムの魅力

イスタンブールに着いた初日に手に入れたキリムはかなり大きくて、これを巻いてリュックの上に括りつけて行動することになりました。数ヶ月の旅を考えると重荷でした。もともとキリムは遊牧民のものなので、野宿もできると思いつつ、色彩と文様が織り成す土産に心が躍りました。買ったキリムは自然染料と化学染料が両方使われているようで、自然染料の部分が古く、そこに化学染料で修復したものです。アンテイックなものはかなり鑑定が難しくて数多く接しないと判断できません。それより自分の美意識に頼り、色彩や文様が好きになったものを買うのがいいと思います。自分が買ったキリムは紅色と黄緑の補色があって、パウル・クレーの抽象絵画のような印象です。文様も幾何的なカタチがモザイクのように続くのですが、修復のせいか途中で色彩が変わり、不思議なグラデーションがあります。完璧なものというより、継接ぎだらけの面白さに溢れています。骨董価値のある工芸品として見るより、アートとして見た方が楽しいし、生活雑貨として使ってこそ心が豊かになると思います。

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