A・レームデンの風景

再びウィーン幻想派の話です。自分がいた頃の美術アカデミーにはハウズナーの他に、A・レームデンがクラスを持っていました。同じ幻想派でもハウズナーとはテーマが異なり、戦争体験を基にした風景を描いていました。学んでいる学生もレームデンばりの作品を描いていて、なかなかの信奉者がいるようでした。レームデンの風景画は地表が見えていたり、粉塵が舞っていたりして、ただならぬ気配を感じさせるものです。最近の報道でイラクの爆弾テロが街の中であって、黒煙が立ち昇っていく様子をテレビで見ました。ふいにレームデンの風景画が頭に甦ってきて、こうしたリアルな風景をあのように象徴的に表現したんだなと思いました。レームデンの色彩は日本画を思わせるような淡さがあって、悲惨な風景を悲惨な状態で描いていません。そこが幻想派の面目躍如たるところかと思います。

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