ジグゾーパズル的ブリューゲル

ウィーン美術史美術館にはブリューゲルだけの部屋があって、代表作がたくさん観られます。そんなことも知らずにウィーンに行き、この農民画家に出会った時は、息を呑むほど驚いて、ただひたすら見入ってしまいました。秋の枯葉色した画面は、自分がどんな絵を描いてもその色になってしまう、いわば「自己色」と勝手に呼んでいる色彩で、それだけでも忽ちブリューゲルに参ってしまったのでした。描かれている内容も楽しくてなりませんでした。当時の風俗が丹念に描き込まれ、博物館のごとく、いやオモチャ箱をひっくり返したような画面構成で、ずっと観ていても飽きないのでした。きっとジグゾーパズルになっているに違いないとギャラリーショップに行ったのですが、当時はそんな洒落たグッズはありませんでした。でも自分の中ではブリューゲルほどジグゾーパズルにふさわしい画家はいないと思っています。ギャラリーショップが充実している昨今は何でもないことですが、当時からこの作家にはこんな商品があってもいいのかな等と自分の中で勝手に考えて楽しんでいたのでした。

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