陶壁の無作為を装う作為

風雨にさらされた土壁の美しさを昨日のブログに書きました。これが自分の造形要素として取り入れられないかを以前から考え始め、実際に陶板を使って自然がもたらせた風合いを出そうと苦心したことがあります。いかに嫌味なく自然に見せるか。あらかじめ風化した状態を作る試みです。すでに亡くなった人で有元利夫さんという画家がいます。油絵やテンペラを古く見せるため絵を描き終えた後、木枠から画布をはずし、もみくちゃにして絵の具を所々剥がして作品を完成させたそうです。陶で風化した状態を作って壁にしたら、剥がれ落ちた絵の具と同じ効果が得られるのではないかと思います。西洋絵画でも修復前は消えゆく美があって、表現された内容とは別の面白さがあります。もちろん修復しなければ名画は失われてしまうのですが。

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