ウィーンの長い冬

このところ朝晩めっきり冷え込んできました。こんな季節になるとヨーロッパに暮らしはじめて嫌気がさした長く暗い冬のことを思い出します。夕方4時になると辺りは暗くなり、釣瓶落としの如く夜の帳がおりて、翌朝は9時にならないと明るくなりません。とは言っても昼間はいつもどんよりした寒々しい日が続きます。フロイトをはじめとする心理学者や哲学者が育つ土壌はこんな長い冬にあるのかもしれません。冬は部屋に篭もることが多く、ウィーンの下宿では、一番安いラジカセを電器屋で買って日本から持参した音楽を繰り返し聴いていました。ドイツ語のニュースも街行く人々の会話もわからず、昼間は学校と下宿の行き帰りだけでした。秋から新学期が始まっていたので、すぐ冬がやってきて孤独を感じることもありました。ドイツ語を学んでいたミュンヘン近郊のムルナウは光輝く夏でしたので、ウィーンの生活が始まった初冬はつらいものがありました。

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