フンデルトワッサーに会った日

フンデルトワッサーが亡くなってどのくらい経つのでしょうか。自分がウィーン国立美術アカデミーに在籍していた頃、アカデミーにはフンデルトワッサー教室があって、よくそこを見に行きました。観葉植物が所狭しと置かれて、さらに様々な浄化装置があって、その間を学生たちがイーゼルを立てて絵を描いていました。フンデルトワッサーはなかなか姿を見せなかったのですが、助手から今日フンデルトワッサーが来てると情報をもらったので、さっそく日本で作ってきた木版画を抱えて会いに行きました。フンデルトワッサーは私の版画をじっくり見て、「これはいいね。でも君の絵には色彩がない。なぜ色彩を使わないのか。」と聞いてきました。モノクロはだめだと言わんばかりの反応でした。平易なドイツ語で手振りを交えて話しかける様子は、私が外国人という配慮ではなく、まるで子供のような話しぶりだなと感じ取れました。

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