グスタフ・クリムト

世紀末ウィーンの美術界で活躍した画家です。作品はベルベデーレ宮殿内のギャラリーにありました。ウィーンではあまりにも有名な画家で、作品を絵葉書やポスターにして街のあちこちの土産物店で売っていました。刺繍によるネクタイにもなっていて、自分も2本持っています。なんといっても絵柄が美しくどんなデザインにもなりうるのです。具象的な人物の周囲を抽象的な模様を施してあるのは、現代にもウケル要素だと思います。瀟洒な感じがいいのです。ただし、美術的に考えれば完全に革新をもたらせた画家ではないと思います。周囲の模様はエキゾチックな装飾であって、抽象まで到達しているとは言えないでしょう。バウハウスで活動したクレーや渡米したモンドリアンに見られる抽象化とは少しニュアンスが違うと思います。でも具象的な人物と抽象的な模様の狭間を行き来して、幻想空間を作り上げたところはさすがと言えます。

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