ブラジル×ヨコハマ時の懸け橋

横浜市民ギャラリーで「ブラジル×ヨコハマ時の懸け橋」とタイトルのついたブラジル日系画家による100年の歩みを総括する展覧会をやっています。今年はブラジル移住100周年にあたるそうで、物心共に安定した日系人が芸術の世界でも活躍していることを示す展示内容になっていました。世代が若返る度に多様化するアートが登場し、サンパウロビエンナーレの影響もあって、現在では日系芸術家の活躍はブラジル美術界になくてはならぬ存在のように感じました。日本人としてのアイデンテイテイーというより、アートの国際性を強く感じる作品が多い印象を受けました。

RECORD10月・11月アップ

一日一枚ずつポストカード大の平面作品を作り続けて、それに「RECORD」というタイトルをつけています。ホームページに少しずつアップしていますので、いつでも見られます。昨年の10月と11月に制作したRECORDを昨日アップいたしました。最後にコトバをつけていますが、月ごとの関連性が薄いのでコトバには苦慮しています。最近のRECORDも撮影が終わっています。追々アップしていく予定です。毎日毎日の積み重ねというものは我ながら凄いものだなと振り返っています。楽しみながら、時に苦しみながら、マンネリと戦いながらやっておりますが、これがあるからこそ公務が多忙な時でもアートから気持ちが離れずにいられると思っています。なお、ホームページにはこの文章の最後にあるアドレスをクリックしていただけると入ることができます。ご高覧いただければ幸いです。       Yutaka Aihara.com

森を俯瞰する作品

まだ柱の本数が足りないことがわかって、今日は杉材の追加購入をしました。やや長めの柱をさらに8本彫っていきます。材料の購入はちょっといい気持ちになります。可能性が広がるためかもしれません。床材も業者にお願いしました。全体が掴めるようになると、より具体化したイメージになり、作品全体の大きさの見当がついてきます。今制作中の「構築〜起源〜」は全体の大きさも構成も決めずにスタートし、途中で雛型を作り、大きさを限定する方法をとりました。面積で言えば今までで一番大きな作品になる予定です。ただ陶彫部分がないため量感のない作品になりますが、木を彫る楽しさを覚え、また床に広がる地形的な面白さが自分を虜にしています。森を俯瞰できる作品と言えます。

全体構想を念頭に入れながら…

三連休に課した目標は何とかクリアすることができ、次なる目標が見えてきました。今まで彫った杉の柱は62本、長い柱で2メートル、短い柱で90センチとなっています。これからは雛型を確認しながら、あとどのくらい柱が必要になるかを考えていきたいと思います。柱を支える土台も作ることにしました。土台にはいつものように砂を硬化剤で貼り付けて大地を表現しようと考えています。この作品はテーブル彫刻ではありません。かつて作った「発掘〜点景〜」と同じ床置きの作品になります。こうしてイメージを確かめながら考える時が一番幸せを感じる時かもしれません。作品は作り終えてしまうと自分の手から離れて後悔ばかりが残ります。次作の「構築〜起源〜」はまだこれから始まるのです。期待を胸に明日から全体構想に入ります。

木の裂け目を生かす

現在彫っている杉材は上等なものではありません。杉材にしては比較的安価で売られているものです。節や裂け目があちらこちらにあり、かえってそれが面白くて購入しました。今日彫ったものもかなり大きな裂け目があり、彫っている途中で2つに割れないかとひやりとしました。生木は切り出された後、乾燥により裂け目が入るのが自然です。裂け目がなく節も少なく木目が詰んでいる材木が良質とされ、価格も高くなりますが、現在制作中の自分の作品にはむしろ節や裂け目があった方がいいのです。精緻な作品ならば良質なものを使いますが、これは地べたから数十本がニョキニョキ生えだすようにイメージしている作品なので、裂け目や欠落があってもそれを生かすことが出来ると考えています。今日も目標の2本を彫り終えて帰途につきました。

三連休・貴重な時間

今日から三連休になり、制作三昧になれる幸せを感じます。三連休に何をすべきかという身近な目標を立て、貴重な時間を有効に使いたいと思います。さしずめ杉の柱を一日2本ずつ彫って、6本は荒彫りを終えることを目標にしました。単純な作業です。でもそんな単純さが積み重なって複雑な構成へと進んでいくのです。今日彫り始めたら、柱の彫り跡がサーモンピンクで美しさを感じました。杉は角材にして外に放置してあったので、表面は風雨に晒されて古びた感じでしたが、彫ってみるとキレイな年輪が現れて気持ちよくなりました。香りもよく森林の中にいるような気分です。朝9時前に作業場に到着し、鑿を研いでから彫り始め、昼食を15分間とってから午後3時までやりました。夏の頃とは違い、少ない休憩で作業ができます。午後3時の目安は、余力を残して終わるために自分にとってちょうどいい時間帯なのです。また明日続きをやりたいと思います。              Yutaka Aihara.com

7年前の陶彫の感想より

ニューヨーク同時多発テロの場所グランド・ゼロに献花をする人々の記事が今日の新聞に掲載されていました。ちょうどその頃、都市空間を陶彫で表現した作品を作っていて、これを横浜で発表したら、これはテロに対する抗議かと人に聞かれました。テロが起こる前から作っていた作品なので、別にテロに誘発されたわけではなかったけれど、何度も質問されていたので、観る人がそのように受け取るならばそれでいいと思っていたくらいです。自分が作る陶彫作品は都市をイメージするものが多く、「発掘」というタイトルをつけていても、古代の遺跡の模倣ではなく、むしろ近未来的な雰囲気が出るので、現代の都市が廃墟化していると鑑賞者に捉えられても仕方がないことだと思います。たまたま同時多発テロの時期と一致してしまったので、こんな感想を多くもらったのだと思いました。               Yutaka Aihara.com

眠りに誘われて…

この頃、夕食を済ますと眠くて眠くて仕方ありません。RECORDを描かなければと思いつつ、ちょっと寝転がるとそのままぐっすり寝てしまうことが結構あります。昼間の公務、たまに夜行くスポーツクラブの水泳、週末の創作活動を考えるとオーバーワークなのかもしれません。睡眠が楽しみになっています。あれこれ心配事がないことも睡眠を楽しめる要因だろうと思います。昔に比べると夢を見ることはなくなりました。夢の中で創作をやって、思わぬいい作品が出来上がったと思ったら朝を迎え、そのままどんな作品を作ったか思い出せなくなったことがあります。満足感だけが残る幸せな夢でしたが、その作品を作ろうにも思い出せない、夢が成す悪戯な一夜でした。さて、また今夜も眠りに誘われています。それでは、おやすみなさい。Yutaka Aihara.com

星・月・虫の音

夏の暑さとはだいぶ変わってきたとはいえ、晴れた日はまだまだ残暑で汗をかきます。でも夜になると秋の雰囲気が漂います。家内を車で迎えに行った帰り道、星がよく見えました。月も満月ではないにしろくっきりと見えていました。我が家は横浜と言っても周囲には雑木林が残るベッドタウンです。草や木々のあたりから虫の鳴き声がよく聞こえます。この様々な虫の鳴き声が聞こえてくると秋本番という感じがします。秋は夜になると耳からやってくると言っても差し支えありません。この風情を残したいと考えてしまいます。ひと昔に比べると周囲の雑木林も面積が減ってきました。宅地造成の工事はあちらこちらでやっています。森のような広大な雑木林はなくなってきました。うっそうとした木々の上に月がぽっかり出て、周りに星が瞬いている風景はいつまで見ることができるのでしょうか。           Yutaka Aihara.com

空気澄みわたる一日

爽やかな一日でした。湿度が低く空気が澄みわたっていました。このまま秋になっていくのでしょうか。気候の変わり目は気分の変わり目でもあります。景色が陽の光をうけて、くっきりと浮かび上がり、木々がやや濃い陰影を落としているのを見るにつけ、自分の作品を野外に展示したい欲求に駆られます。陶彫なら風雨に晒されても耐えうる素材だと思います。石や金属のように頑丈ではありませんが、野外に展示する陶彫作品は他の素材に見られない土のよさが出るのではないかと思います。土から生まれし土の造形、幾星霜を重ね、再び土に戻るという野外作品が出来ればいいなあと思います。空気澄みわたる一日にイメージした作品です。             Yutaka Aihara.com

リンゴに寄せる思い

長野県に住む師匠で彫刻家の池田宗弘先生から箱詰めのリンゴが届きました。電話でお礼を申し上げると、「君が夏来た時に用意できなくて…」と相変わらず張りのある元気な声が返ってきました。さっそく頂いたリンゴをひとつ食べました。採りたての新鮮な香りと甘酸っぱいサクっとした感じが口いっぱいに広がりました。果物の中でリンゴは大好きな部類に入ります。昔住んでいたヨーロッパでもよくリンゴを齧りながら散歩をしました。ヨーロッパの市場で売っているリンゴは、日本ほど種類がなく粒も揃っていなかったように記憶していますが、それでもほどよい酸味があって美味しく感じました。当時ビタミンはリンゴで取っていたように思います。どこへ行くにもリンゴを食べながら歩き、カフェではアップヘルザフト(リンゴジュース)を注文していました。当時食べていたリンゴに比べれば、送られてきた長野県産のリンゴは立派なカタチと味をもっています。しばらくは美味しいリンゴを堪能できそうです。                       Yutaka Aihara.com

「おわら風の盆」の夕べ

職場の近くの区民文化センターで、家内が胡弓を演奏すると言うので、夕方聴きに行ってきました。富山県八尾だけでなく、ここ横浜でも「おわら風の盆」は同好会によって演奏が続けられています。町流しもあると聞いたのですが、夜まで居られず帰宅しました。この夕べの会で、2年前八尾で体験した「おわら風の盆」を思い出しました。「おわら」は男踊りがなかなかいいのです。蓑笠を被った男衆が呼吸を合わせて踊る景色は何とも情緒があって素敵でした。伝統が富山県八尾出身者だけでなく、興味関心のある様々な人たちによって守られているのは稀なことだと思います。週末の作業一本の生活からちょっと解放された午後でした。                Yutaka Aihara.com

週末の作業場から

ウイークデイは忙しい公務があるため今月から週末の制作を再開しました。これから12月の年越しまでウイークエンドアーテイストです。まだ残暑が厳しく相変わらず汗をかきますが、週末は貴重な時間なので朝から夕方まで作業をしています。先月のように継続的な作業ができないので、限りある中での計画的な作業になります。今週末はここまでやろうというノルマを課します。計画を決めておいたほうが楽に作業に入れるのです。今日は杉材の柱を彫ることに専念しました。ひとつずつ確実に仕事をこなした方が一日の仕事量に対して納得がいきます。いいイメージをもって一日を終えることができて精神的にもいい状態を保つことができると考えます。いずれ全体を構成するときは精神的な浮き沈みがあって、なかなかきつい仕事になりますが、それは時期尚早、今のところは気分よく一日を終わりたいと思っております。Yutaka Aihara.com

画家の人生ドラマを読む

読書の秋とは言え、まだ残暑が厳しく活字を追う気分にはなりません。でも夏から続いている本があります。今読んでいるのはフランドルの画家フェルメールに関するものです。たまたま東京でフェルメールの展覧会をやっていますが、それに関わらずフェルメールの人生ドラマに夢中になっています。前にブリューゲルに関する同じような人生ドラマを読みました。事実を基本に創作で補うドラマで、あたかもフランドルにいるような錯覚に陥ります。読後にまたブログで内容を書こうと思います。この本を読み終える頃には秋本番を迎えるでしょうか。読書は続けて読むには時間が取れず、仕事や創作の合間をぬって、気が向けば読むという具合なので、なかなか進まず中断することも度々あります。それでも読みかけの本を常に携帯しているのがいい気分なのです。                           Yutaka Aihara.com

雛型と実作品の関係

今制作中の「構築〜起源〜」は最初に雛型を作ることはせず、いきなり実材を彫り始めました。杉の柱が数十本立ち並ぶ構成になりますが、ここにきて雛型を作る必要性を感じます。柱の長短を調整したいことと全体構成にやや不安があるためです。ある程度実際の柱が彫りあがってから雛型を作るのは今までにないことです。本来ならば雛型を作り、それに応じて実作品を作っていくのが制作過程としてはやりやすい方法ですが、それが全てとは言えません。雛型を作ってしまうと、全体の作業が見えすぎて退屈になることがあるからです。今回の作品は雛型を作らずにやってみようと思ったのですが、やはり全体把握をしたいと思い立ち、急遽雛型の制作を始めました。完成予想を考えたデッサンも同じです。まずイメージを書き留める手段としてデッサンがよいと思いますが、それすらやらずに実作品に手を出す場合があります。途中で描くデッサンや雛型作りはイメージを書き留めるのではなく、出来上がったイメージの確認だと考えています。

滞るカタチとコトバ

公務が忙しくなりつつあるのを言い訳に制作が進んでいません。8月は多忙なスケジュールの合間に制作を進めていました。今月も変わらず頑張らなければと思います。目の前の仕事に追われると、空間をイメージすることもコトバを生み出すことも出来なくなります。カタチはどこからやってくるのか、コトバはどうしたら生まれるのか、その中に埋没していないとあるいは難しいのかもしれません。凝縮した時間の中でやろうとしても出来ないと感じることがあります。また有り余る時間があったとしても出来るかどうかわかりません。イメージの出所は謎です。ふと何かを感じたりして、空間の中に存在するものが見えたりしますが、忘れてしまうこともあります。多忙に負けず、何とかしたいと思っています。                Yutaka Aihara.com

RECORDは「二等辺三角形」

9月のRECORDのテーマを二等辺三角形に決めました。二等辺三角形はかなり鋭角なカタチにしました。今月はこのカタチを取り込んだ構成を考えていきたいと思います。鋭角なカタチが与える印象は緊張感を生みます。緩やかな構成は考えにくくなります。色彩が溢れたり、要素が多くなりすぎると、シンプルな造形に揺り戻したくなるようで、まずは二等辺三角形を使って技法も単純化した作品を作り出しました。日常生活には様々なカタチが溢れていて、その中で自分が求めるカタチを手探りしていく過程は、思考をまとめていく過程でもあります。何かを拠り所にしているわけですが、それが何かは自分でもよくわかりません。選択、判断、追加、削除の繰り返しです。RECORDは小さい平面作品で、ゲームやパズルのような遊びの感覚で新たな表現を探ろうとしていると言えます。              Yutaka Aihara.com

9月の初めに…

9月になりました。少しずつ公務の仕事が増えてきました。まだ夏の名残りなのか湿度が高く秋という感じはしません。今日、群馬県高崎市にあるNTT東日本から企画展のお誘いがありました。博物館にある古代の発掘品と現代造形作家の作品を並べて展示する試みです。造形作家6人に打診があったようです。趣旨はよくわかりました。NTT東日本支社からの手紙を読んでいると興味が尽きません。時期的なことが大丈夫であれば参加したいと考えています。新たな機会が訪れれば、また意欲が湧いてきます。平面作品のRECORDも、9月になってどんな展開にしようか思案しています。とりあえず今月の方針を立てて制作をしていきたいと思います。        Yutaka Aihara.com

8月の終わりに…

7月から8月にかけてスケジュールが目白押しでした。3回目の個展開催、民間企業派遣研修、通常業務の出張、後輩の結婚式、師匠に会うため長野へ、また親友に会うため京都へ、最後に横浜開港150周年記念のFUNEプロジェクト参加、そして時間さえあれば新作の作業と目まぐるしい中で8月が終わろうとしています。7月初めのブログに書いた予定は、やっとここにきて何とかクリアできたかなという感じがしています。今晩は一緒に仕事をしているカメラマンの2人が自宅に来て、今後の打ち合わせをしました。一区切りついたような気分ですが、今後を考えるとこれからやることが多く、気は抜けません。気がかりなことは、来年の7月に予定している4回目の個展の作品に今着手したばかりという点です。また1年間が始まるのです。いや、図録撮影のことを考えると、来年3月初めには新作が完成していなければならず、9月以降も頑張らざるをえません。楽しみではありますが…。                               Yutaka Aihara.com

「種子を粉にひくな」

表題はドイツの女流画家ケーテ・コルヴィッツの日記につけられたタイトルです。ブログでは8月11日に「ケーテ・コルヴィッツの肖像」の感想を書いています。同時に読み始めた2冊のコルヴィッツの本でしたが、かなり時間差がついてしまいました。日記の方は鈴木東民・訳によるもので、内容は芸術家というより一人の人間としてのコルヴィッツの心情が語られていて、じっくり味わいながら、中断も余儀なくされて、今やっと読み終えたところです。家族を思い、母として生きたコルヴィッツ。第一次大戦で次男を失い、第二次大戦で孫を失い、ナチスによって芸術活動を封じられ、ヒットラー政権が終わる寸前に他界したコルヴィッツ。作品に込められた思いが伝わる日記の内容でした。「種子を粉にひくな」という副題は、戦争でこれ以上若者を失うことに身をもって反対したコルヴィッツが、ゲーテの言葉を引用したものです。この夏は、社会的表現にその才能を捧げた画家を今一度振り返ってみる機会を持ちました。                    Yutaka Aihara.com

憧れのアトリエ

長野県にある彫刻家池田宗弘先生のアトリエを訪ねると、いつも先生の彫刻作品よりアトリエの雰囲気が雄弁に先生の内面を語っているように感じます。調度品やコレクションがまさに先生の作品の一部なのです。ダイニングテーブルから椅子、各種棚、扉、床に至るまで厚板が使われ、しかも時代を経た渋い雰囲気を醸し出しています。作業台も同様です。この環境あってこそ作品が生きるし、創作に結びつくのでしょう。自分はどうなのか、明らかに先生とは異なる個性を持っているので作業場は簡素でいいのかもしれません。古い民家を改造した蔵のようなアトリエを夢見たことがありましたが、実際には工場のような空間が自分には相応しいと思います。自分もそろそろ自分の作品より雄弁に自分を語る作業場をもたなければいけないと感じています。自分はアトリエではなく作業場というのが合っていると思います。もっと広い空間、何も無い空間、必要な道具が必要な分だけある空間、そんな作業場を夢見るようになりました。                  Yutaka Aihara.com

彫刻家池田宗弘のアトリエ

大学で彫刻を教えていただいて、私の結婚式の仲人もしていただいて、さらに師匠として先輩として圧倒的な仕事をしている池田先生は、自分の目標であり、創作活動への意欲を喚起させられる人です。長野県麻績村の修道院のようなアトリエで一人暮らしをしていられるので、1年に1回は様子を伺いがてら刺激をもらってきます。昨日は奥様の月々の命日(2月27日が命日)にあたり、東京から神父さんが2名お見えになって礼拝をしておりました。先生のアトリエには奥様の墓所があり、アトリエそのものも教会のような造りになっています。1階は墓所のある屋内作品展示室とコンクリート床の野外作業場。作業場には真鍮直付けの具象彫刻が所狭しを置かれていました。2回は書庫を兼ねたリビングとキッチン、そこに現在制作中の礼拝堂。3回は寝室。地下にも石膏や鍛冶のための作業場があります。大きな真鍮の作品はアトリエを囲む木立の中に点在しています。とにかく置かれている大小の作品量には圧倒させられます。小さなものでも大切に保管している先生の姿勢を見習いました。たった一日、されど一日。この刺激をもってまた1年間。来夏まで創作活動を頑張っていこうと誓いました。        Yutaka Aihara.com

師匠、友人を訪ねて…

茨城県に陶芸家佐藤和美さん、京都府に版画家渡辺聖仁さん、長野県に彫刻家池田宗弘先生がアトリエを構えていて、1年のうちに必ず1回はこの3人を訪ねるようにしています。仕事上の刺激をもらい、また自分の制作を報告できる大切な師匠と友人たちなのです。5月の連休は陶炎祭が茨城県笠間であるので佐藤さんはこの時季、8月のお盆過ぎに古美術巡りに京都を訪れるので渡辺さんはこの時季、そして最後は自分を高めてくれる師匠のもとへ…という具合にそれぞれ楽しみをもって訪ね歩きます。今日は長野県に出かけます。師匠の池田先生宅で過ごす時間は、他の友人たちとは違い、自分は厳しい気持ちにさせられます。背筋が伸びる心境なのですが、1年に1回くらいはこんな機会を持たなければならないと思っています。妥協しない仕事をしている師匠にどう立ち向かったらいいのか、優しいけれど決して甘くは無い環境に再び自分の身を置いて、大いなる刺激を貰おうを考えています。 Yutaka Aihara.com

京都「下村良之介展」

関西旅行を振り返って、今日は京都国立近代美術館で開催されている「下村良之介展」の感想を書くことにしました。実際に見た日は21日(木)です。昨年は同近代美術館で「麻田浩展」を開催していて、興味深い幻想画家の展覧会がちょうど見られてよかったと思いましたが、今年も「下村良之介展」はとてもラッキーでした。紙粘土で画面に凹凸をつくり、レリーフ状になったところに紙を貼って彩色する下村流技法は、時に古代文様のようであったり、鳥が飛ぶイメージであったりして壁画的な重厚感に溢れる作品でした。自分も陶壁の作品があり、さらに発展させたい願いがあるので、今回の「下村良之介展」は大変参考になりました。イメージを大きなスケールで、また深く追求したい意図が感じられて、自由闊達な作風に自分も勇気づけられた展覧会でした。                         Yutaka Aihara.com

興福寺・乾漆八部衆立像

先週行った奈良での仏像巡りの感想が、ブログでは飛び飛びになってしまっていますが、自分の記録のためにも書いておきたいと思っています。興福寺にある八部衆はインド古来の神々が仏法守護等の役割を与えられたもので、異教的な雰囲気に自分の感覚が擽られるので、仏像としては大好きな部類に入ります。八部衆の中であまりにも有名なのが阿修羅像でしょうか。りりしい顔立ちが一度見たら忘れられない印象を残します。鳥頭人身の迦楼羅像も不思議な仏像です。現代の幻想派絵画に出てくるモチーフのようです。雰囲気だけで八部衆を語ることはできませんが、こうした斬新な造形が奈良時代に作られたことに驚いてしまいます。興福寺宝物館は奈良公園の中でも奈良駅に近い場所にあり、法隆寺や秋篠寺を周った後、奈良駅から早歩きでやってきて閉館間近に飛び込んだところです。阿修羅像に会えてよかったと思わず微笑んでしまいました。 Yutaka Aihara.com

後輩の結婚式によせて…

この歳になると冠婚葬祭と言えば法事が多く、今日のような結婚式の招待を受けるのは稀です。自分は新郎側の親しい者として列席しました。彼は自分と同じ大学の出身で、横浜のグループ展では大きな具象作品を発表している20代の若者です。今年2月に発表した「龍」の彫刻は、他の作品を圧倒する迫力があって見事でした。彼はイケメンで真面目で努力家、自分から見れば出来すぎた後輩です。素敵な伴侶を得て、これから彼はどんな世界を創造していくのか楽しみです。自分たちの結婚式を思い返すと暗中模索の船出でしたが、それに比べて後輩はしっかりした職業を持ち、さらに才能に恵まれているので、今日の挙式でさらに自分を高められるのではないかと思っています。末永く幸せになって欲しいと願うばかりです。          Yutaka Aihara.com

重森三玲庭園美術館

先週出かけた京都では旧友に会っただけではなく、美術館にも足を運びました。今回の京都では重森三玲庭園美術館をメインにしました。故重森三玲はブログに度々書いている庭園家で、その作庭ぶりは現代彫刻の理念を併せ持っていると自分は思っています。自分の亡父も造園を手がけていたので、造園業には親近感があり、たまたま今夏造園土木会社で企業研修をしたこともあって、重森三玲の作品が見たくなったのも当然の成り行きかもしれません。庭園美術館は京都大学の近くにあって予約して中に入ります。案内をしてくださった方は重森三玲の娘婿にあたる方で、懇切丁寧な説明をしていただきました。ともかく和風モダンの限りを尽くした旧宅で、庭の造形といい茶室の空間といい、目を奪われるものばかりでした。石組と苔と本来そこにあった植木がすべて重森ワールドを演出していて、自然の産物と人の造形が噛み合った見事な空間でした。茶室の襖絵は純粋抽象絵画であり、モンドリアンやカンデインスキーを髣髴とさせる表現でした。ここに来て一番の収穫は自分の造形に対する意欲が湧いたこと。とてもいい時間を過ごすことができて満足でした。                           Yutaka Aihara.com

法隆寺・百済観音像再見

一昨日は秋篠寺の他に、有名な法隆寺にも足を運び、飛鳥時代の仏像を見てまわりました。ご存知の通り世界最古の木造建築を有し世界遺産にもなっている法隆寺ですが、数年前に来て以来の観光でした。その時は百済観音像は工事中の建物の中にいましたが、今回は新しい百済観音堂ができて気持ちよく鑑賞することができました。飛鳥時代の仏像は釈迦三尊像もあって、素朴な造りが特徴ですが、百済観音像はすらりと背が高く、水差しを片手にさげ、素朴というより優美な雰囲気があります。横から眺めると痩身な姿が天上に届かんとばかりに感じてしまいます。斑鳩の里は奈良駅から遠いので、来るのに億劫に感じることがありますが、やはり来て見ると世界に知られた法隆寺、その中でも百済観音像は秀逸で旅の疲れが癒されました。 Yutaka Aihara.com

京都 1年ぶりの再会

京都には滞欧時代によく遊んだ版画家の渡辺聖仁さんが住んでいます。昨年は久しぶりに会って旧交を温めましたが、今年は1年ぶりの再会です。まず自分の図録を渡して個展の報告。すると渡辺さんも11月に名古屋で個展の計画があると返答がきました。今まで木版画一本でやってきたのが、今度の個展ではタブローを10枚程度仕上げる予定だとか。木版画は大胆な構成と綿密な技法が冴えた作品ですが、タブローもきっと渡辺さんのことだから密度の濃い画風になるだろうと想像がつきます。版画より自由な1点制作につい期待をしてしまいます。自分も陶彫から木彫に制作が移動しているということを話したら、渡辺さんは興味を示してくれました。木版画に木彫、お互い木材を扱っていることで共通する何かがあるのかもしれません。自分も来年の個展から作風が変わることもあって、お互いにとって飛躍の年になればと願いました。                           Yutaka Aihara.com

秋篠寺・伎芸天再見

ブログを書き始めた頃、奈良県秋篠寺にある伎芸天について触れたことがあります。自分の大好きな仏像で、作業場には大きな伎芸天の全体写真が額装して掛けてあります。今日は奈良にやってきて、まず伎芸天に会いに行こうと決めていました。秋篠寺は電車で行くには不便な所にあり、盆休みも終わって周囲にはほとんど人がいない状態でした。本堂に入ると美しい技芸天の見慣れた姿が眼に飛び込んできて、夏の暑さをしばし忘れました。解説を読むと頭部は乾漆造で天平時代、身体の部分が寄木造で鎌倉時代とありました。今まで気にせずに見ていましたが、時代が変わって修整がされていることがわかりました。でも自然な立ち姿は時代を超えて心に入ってくるようで、ここまで来た甲斐があったと思いました。秋篠寺の他に法隆寺に行き、飛鳥時代の仏像をじっくり見てきましたが、それはまた改めて書くことにします。                               Yutaka Aihara.com

古美術を求めて…

昨年のブログを見ると、この時季に京都の桂離宮に出かけています。自分は木彫の作業が一段落すると古美術が見たくなる傾向があって、仏像や庭園をじっくり鑑賞したくなるのです。今年も昨年同様に古都を訪ねてみたくなりました。今年はとくに仏像が見たいと思っています。京都に住む版画家で親友の渡辺聖仁さんに電話をして近々会おうと約束をしました。飛鳥、白鳳、天平時代に思いを馳せながら奈良を歩くのもいいなと思います。仏像は図版では表せない空気があって、その場所に行かなければ本当の魅力は伝わらないのです。庭園はなおさらその環境に身を置いてこそ味わえる空間なのです。そんなことを突如思い立って、京都の重森三玲庭園美術館に予約をしてしまいました。三玲美術館と渡辺さん、まずは見たい、会いたい人に連絡してから交通手段を考えるというのが、今回の思いつき関西旅行です。明日行って参ります。仕事は年休ですね。                  Yutaka Aihara.com