離任式に贈られたコトバ

私の職種では、離任式はこの時期に行われる式典のひとつです。その式典の最中に若い世代の人たちから、離任する職員にお別れのコトバを贈られる場面があります。私は一般職員の頃から幾度となく別の職場へと異動(離任)をしてきましたが、若い人から贈られたコトバで、今日ほど度肝を抜かれたことはありませんでした。コトバを考える人の人選は私自身がやりました。通常は別の職員に任せるところですが、私はこの人にやって欲しいと考えていたのでした。彼女は文章では特筆できる能力を持っていて、発想が豊かです。現在、相原工房に出入りしている若いアーティストに続く世代で、彼女は造形美術に限らず、詩や随筆に才能を秘めています。離任式で贈られた文章を引用いたします。「多様な色が混ざり、マーブル模様を描いている様子は混沌としていて、最終的にどんな色になるのか想像もできません。今の私はまさにその状態です。いろいろな人に出逢っていくたびに影響を受けて、その人が持つ『色』を吸収します。初めは一色しかなかったパレットが、ゆたかな出逢いによって鮮やかな色で飾られていき、やがて溶け合うと一つの色になります。ですが私はまだその色が見えておらず、ぐるぐると回っているだけです。」この人の感受性に何かを感じないわけにはいきません。出合いを出逢いと書いていたのも彼女なりの理由があるのかなぁと思いました。私は彼女に「自分はどういう人間なのか見つけていこう」と話したらしく、その私の弁が語られていました。自己理解、これは表現者の第一歩です。彼女はまだ年齢が若すぎるので、これから知識を身につけながら感性を深めていくようにして欲しいと願うばかりです。私は彼女が一人で綴っている自己ノートを見せてもらいました。詩がそこにありました。まだ詩になれない溌溂としたコトバもそこにありました。彼女に限らず、敏感な感性の育成は周囲の人たちが行うべきだろうと思っています。恵まれた環境を用意してあげたいと思うのは私ばかりではないでしょう。

関連する投稿

  • 命を繋ぐ思いをこめて… 今日は3.11です。8年前に未曾有な被害を齎せた東日本大震災。横浜でも大きな揺れがあって、物資の運搬経路が一時ダウンし、自然災害の影響力を感じ取った日々を今でも忘れることが出来ません。もうあれから8 […]
  • 思いが伝わる一遍の詩 今日職場で何気なく開いた新聞に掲載された一遍の詩に目がとまりました。造形作品と同じで、コトバにも出会いがあると思います。詩に綴られているコトバは自分の気持ちに訴えかけてきて、日常のちょっとした場面が […]
  • 文筆家の恩師からの手紙 横浜に住む文筆家笠原實先生から、個展の感想が書かれた手紙をいただきました。因みに笠原實先生は私の恩師です。毎年東京銀座まで足を運んでいいただいて、その場でお会いできなければ、後日感想を手紙にしていた […]
  • 信仰とはなにか?叔父の告別に捧ぐ 齢80歳で叔父量義治が逝去しました。今日は告別式でした。叔父は東大でカント哲学を専攻し、定年まで大学の教壇に立っていました。多くを語らなかった叔父ですが、自分の個展には度々来て示唆に富むコトバをかけ […]
  • RECORDとNOTE 毎日自分に課しているRECORDとNOTE。仕事から帰った夜の時間帯にやっています。ポストカード大にした厚紙ケントに鉛筆で下書きし、場合によってはペン入れするのがRECORD。彩色は5日分をまとめて […]

Comments are closed.