映画「小さな独裁者」雑感

昨晩、常連になっている横浜のミニシアターにドイツ、フランス、ポーランド合作の映画「小さな独裁者」を観に行きました。これはドイツ人兵士ヴァリー・ヘロルトの実話に基づいた物語で、図録によると「1945年4月、敗色濃厚のドイツでは戦いに疲弊した兵士たちによる軍規違反が相次いでいた。部隊を脱走して無人地帯をさまよう兵士ヘロルトは、道ばたに打ち捨てられた軍用車両の中で軍服を発見。それを身にまとって大尉に成りすました彼は、ヒトラー総統の命令と称する架空の任務をでっち上げるなど言葉巧みな嘘を重ね、道中出会った兵士たちを次々と服従させていく。かくして”ヘロルト親衛隊”のリーダーとなった若き脱走兵は、強大な権力の快楽に酔いしれるかのように傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついにはおぞましい大量殺人へと暴走し始める…。」とありました。映画で描き出されるのはヘロルトと彼に従う人物たちの思惑が生み出す共犯関係の中で、権力に対する決して単純ではない関係性が、この映画の大きな主張にもなっているところかなぁと思いました。巧妙な嘘を重ねていくヘロルトにドキドキしながら映画に見入っていた私は、途中から彼に感情移入が出来なくなってしまいました。例え発端は偽りの事象でも、イデオロギーに突き動かされることが失われると、私の心は一気に自身のバランスを取り戻し、映画の後半にある傍若無人な振る舞いと享楽がどんなものであるのかを理解するに至りました。尋常ならざる権力とは何か、思想統制を図りつつあるのであれば、やがて他者の人権を蔑ろにした画一的な社会へ舵をとることも現代社会ではあり得ます。そんな危険な世相をこの映画では訴えているのではないかと感じた次第です。

関連する投稿

  • ミニシアターの先駆的存在 東京神保町にある岩波ホールは、昔から時々出かけていました。最近は地元の横浜にあるシネマジャック&ベティに通っていますが、商業ベースに乗らない映画を観るとなれば、岩波ホールと決めていた時期がありました […]
  • 映画「こころに剣士を」雑感 昨日、横浜のミニシアターにフィンランド・エストニア・ドイツ合作映画「こころに剣士を」を観に行きました。監督はフィンランド人、出演した多くの俳優陣はエストニア人という構成でした。時代は1950年初頭、 […]
  • 京都の「戦後ドイツの映画ポスター」展 先日、京都国立近代美術館で見た「戦後ドイツの映画ポスター」展は、時代背景を考える上で興味をそそる企画でした。第二次世界大戦後、ドイツは東西に分断されました。1990年に統一されるまで、ドイツの映画は […]
  • 週末 3月の制作&映画鑑賞 今日は朝から雨が降っていました。春は雨が降るたび木々が芽吹き、工房周辺の植木畑にも自然の彩を添えていきます。三寒四温とはよく言ったもので、昨日までの暖かさは長く続かず、今日は暖房がなくてはいられない […]
  • 映画「ヒトラーへの285枚の葉書」雑感 先日、横浜のミニシアターに「ヒトラーへの285枚の葉書」を観に行きました。お盆の時期のためかミニシアターは観客がほぼ満席状態でした。自分は意識していなかったのに結果的には終戦記念日に相応しい映画を観 […]

Comments are closed.