暁斎「惺々狂斎画帖」連作について
2019年 2月 27日 水曜日
先日に見に行ったサントリー美術館で開催中の「河鍋暁斎」展では、狩野派絵師として研鑽を積んだ暁斎の珠玉の名品も数多く出品されていましたが、私の関心はやはり戯画にあって、現代のアニメのような劇的な動きのある画帖が、心から楽しいと感じました。表題の「惺々狂斎画帖」は、(一)から(三)まであって、その小さな世界に魅了されました。図録の解説によると、これは日本橋の小間物問屋の主人のために暁斎が描いた肉筆画の連作で、大蛇や化猫が登場する場面が何とも可笑しくて、奇想天外な物語を想像してしまうのです。これは暁斎の描く他の俯瞰図にも言えますが、さまざまなポーズをとる人物が、時に劇画的で極端な仕草をしているために、絵の主題を強く印象づける効果を生んでいると、私は認識しています。図録によると小間物問屋がつぶれた時に、そこに暁斎の絵が200枚もあったそうで、良い値で捌けたと書いてありました。また、江戸情緒あふれる画題は、「江戸名所図絵」に登場する武蔵の地名の由来や浅草寺草創にまつわる伝説や梅若伝説、秋色桜の話、飛鳥山の花見など庶民の遊びを、暁斎らしい工夫を加えて描いていると解説にありました。河鍋暁斎は日本よりも海外で有名になった画家ですが、成程こういう画題であれば、外国人が絵を競って手に入れたのもよく分かります。現代の私たちもグローバルな視点を持つに至ったので、暁斎ワールドが本当に面白いと感じるのです。今では世界に発信するほどになった優秀な日本のアニメですが、その根源には暁斎の世界があるのではないかと私は思っています。北斎漫画にも暁斎の世界と同じ感覚を持ちました。その時代の絵師の片鱗に触れて、自分の創作活動を鼓舞したいと考えているところです。
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Tags: 創作, 展覧会, 画家
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