「デカルト図式の反転」について
2019年 1月 7日 月曜日
冬季休業を利用してフッサールの現象学を少しでも理解しようとしていましたが、難解な語彙や複雑な理論に、正月の休み気分では太刀打ちできず、「経験の構造 フッサール現象学の新しい全体像」(貫茂人著 勁草書房)の読破は出来ませんでした。それでも第八章と第九章を読み終えたので、まず第八章のまとめをNOTE(ブログ)に掲載します。この章では哲学者デカルトが登場してきました。フランス生まれのデカルトは合理主義哲学を唱えた人として有名です。デカルトは元来数学に関心が高く、信仰による真理ではなく人間の理性を用いた自論に、無神論を広める思想家として非難を受けたことがあったようです。そのデカルトが構築したものを体系化して図式として示したものが「デカルト図式」です。「フッサールは、主観と客観を区別した上でコギトとしての前者をすべての基礎とするデカルト的図式を踏襲したという解釈が導かれる。だが、超越や内在の構成分析がある程度完成した段階において、還元論から導かれる図式は維持しうるのだろうか。」と本文中にありますが、現象学は近代哲学を切り開いたデカルト主義を反転させる理論に達していることを本章では証明しています。現象学的還元論はフッサールの代表的な著書「イデーン」の中で述べられていて、そこから発想される結論から、次のような文章が提示されています。「円熟したフッサールの理論において、内在の絶対性は維持しえず、超越的世界は志向的相関の必然的構造とされる。内在を絶対とし、超越を偶然的とするデカルト主義的図式を反転させたものが、円熟した現象学体系だ。この反転は、対象や経験構造に関する現象学的分析の積み重ねに導かれた。~略~初期現象学は、表象のタイプ別分類にすぎなかったが、後期現象学は、経験や体験の場面ごとに多様な原理や装置が見いだされ、場面ごとに別個のシステムからなる全体として組み立てられている。その結果が図式の反転だ。」まとめには到底なりませんが、今日はここまでにします。