葉山の「堀内正和展」

先日、神奈川県葉山にある神奈川県立近代美術館葉山館に「堀内正和展」を見に行ってきました。タイトルが「おもしろ楽しい心と形」となっていて、故堀内正和氏による解説のついた5つの部屋から成り立つ、まさに面白くて楽しくて、もうひとつタメになる展覧会でした。堀内ワールドは抽象彫刻の手引きとも言える作品ばかりで、気難しい精神性や大上段に構えた造形哲学をさらりと言ってのける平易で愉快な論理に裏付けられているような気がしました。5つの部屋はまず「はにわのこころー心と形」という部屋から始まっていました。解説によると「造形行為は、心に形を与えることだ。それは精神の形体化である。作品は作者の精神が形体化されたものであるから、これを見るものは、時間、空間の隔てを超えて、直接に作者の心を聞くことができるのである。」とありました。ここでは初期の具象作品が並んでいました。次は「線ー内なるリズム」と称する部屋で、石膏やセメントの直付けから鉄に素材を変えて、「今までにやりたいと思っていたことがほぼ完全な形で実現出来そうなので、僕はすっかりうれしくなった。」とありました。ここから鉄による幾何抽象の作品が始まったのでした。3つ目の部屋は「巫山悪戯彫刻ー僕のIKOZON理論」で、こんな解説がありました。「現実の世界はイデアの世界が鏡に映った世界だ、とプラトンはいった。すると、現実の世界を鏡に映せば逆にイデアの世界が見えるんじゃないか。」これは覗きカラクリを使った彫刻を考案した作者が、古代哲学を逆手に取って試作したもので、ここでユーモア溢れる立体が登場してきました。4つ目の部屋は「ひとをだまくらかす楽しみ」というユーモア彫刻の発展形がありました。ただし、堀内ワールドはユーモラスであってもあくまで数学的な形態であり、知的な興味関心を充たしてくれるものばかりです。最後の部屋にあったのは「見つけた形」で、まさに数学と造形の出会いが新鮮な形態を生み出しているように感じました。解説には「僕は自分のことを『マラルディスト』と誇称するくらい幾何学、とくに角度に関する事柄が好きで、大切に思っている。」とありました。堀内ワールドが、辿り着いた最終的な形は幾何学的抽象で、知的遊戯のような形態の展開があり、その美しさを生涯かけて求めていたのかぁと思いました。飄々とした展開を見せる堀内ワールドですが、部屋の片隅に置かれた夥しい数のペーパースカルプチャーを見ると、紙をカットし接着材を使って組立てながら、作者は試行錯誤を繰り返していた様子が伺えて、新しい彫刻の価値観を生み出すため努力をした痕跡が残っていました。「おもしろ楽しい心と形」は、面白いとは何か、楽しむとは何かを見つめ続け、実践した彫刻家の模索があって、その取り組みがとりわけ印象に残りました。

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