異形の神々への憧憬

今朝、職場に届いていた日本経済新聞の小欄が目に留まりました。記事は「来訪神:仮面・仮装の神々」がユネスコの無形文化遺産に登録される見込みになったと伝えていました。日本全国に伝承されている異形の神々、たとえば秋田県のナマハゲもそうですが、正月に家を訪ね歩き無病息災や豊穣を齎す神事です。私が生まれた横浜ではそうした伝統が既に廃れていましたが、幼い頃に祖父母から、悪事を働くと鬼がやってくると言われて怖い思いをした記憶があります。無形文化遺産登録の見通しは8県の神事10件になるそうで、「並べて見ると、その奇抜さやユニークさに驚く。宮古島のパーントゥは泥だらけのつる草をまとい、鹿児島のボゼやメンドンの巨大な顔は、どこが何だかよく分からない。アートの実験場といったふうである。」と記事にありました。10件を調べてみると、「吉浜のスネカ-岩手県大船渡市」「米川の水かぶり-宮城県登米市」「男鹿のナマハゲ-秋田県男鹿市」「遊佐の小正月行事-山形県飽海郡遊佐町」「能登のアマメハギ-石川県輪島市・鳳珠郡能登町」「見島のカセドリ-佐賀県佐賀市」「甑島のトシドン-鹿児島県薩摩川内市(下甑島)」「薩摩硫黄島のメンドン-鹿児島県鹿児島郡三島村(薩摩硫黄島)」「悪石島のボゼ-鹿児島県鹿児島郡十島村(悪石島)」「宮古島のパーントゥ-沖縄県宮古島市(宮古島)」で、九州地方が多いようです。記事にはこうした地域の過疎化や高齢化が進み、後継者不足に悩みがあると書かれていて、また子どもを泣かすのは児童虐待ではないかという意見もあり、ユニークな神事が廃れていく心配や警戒感も示されていました。私は個人的には伝承を残して欲しいと考える一人です。地方には独特な風習が残り、その背景があるからこそ生まれた貴重な文化遺産であろうと思います。地方には地方の事情があって他人が口出しすべきではないと思いますが、アートの観点からしても刺激的な遺産だと考えます。私の仮面好きはこんなところにあると思っていて、時間があればこうした地域を訪ねてみたいと願っているのです。

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