町田の「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」展

ドイツの版画家ヨルク・シュマイサーの作品を知ったのは、今を遡ること40年も前になります。シュマイサーが暫く京都に滞在していたこと、奥様が日本人で、私が学生だった頃は、オーストラリアに行ってしまったことが情報として入っていました。その頃、私が見ていた作品は1960年代の銅版画で、図解の様な構図の中にモチーフが繰り返し描かれていました。先日見てきた東京町田市にある町田市立国際版画美術館で開催中の「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」展では、世界各地を旅した銅版画家が残した夥しい作品が展示されており、その質量の凄さに驚かされました。そこには私が嘗て見た作品も含まれていました。図録によると「生涯に渡って、ヨルクは遠く離れた場所に旅すること、その芸術にあって極限の風景に向き合うことを強く望んでいた。きわめて小さなものから巨大なものまで、有機物も無機物も等しく扱った。時には版に何行ものテキストを記した。これらの言葉は(もちろん、刷った時に正しい向きになるように、鏡文字で書かれている)その時その場所での彼の感情や思考の日記をなしている。」(R・パルバース著)という一文がありました。シュマイサーの銅版画にある百科事典の解説のような細かい文章の塊は、感情や思考の記録だったのかと改めて見つめ直すと、彼は旅先で考えたことや感じたことをモチーフと一体化した表現として、画面に取り入れていたことになります。文字群が版画の構成要素になっているのです。また図録の別の文章に「シュマイサーは異なった複数の作品に対して、同一の版を加筆修正しながら繰り返し活用することで、前作のイメージやマチエールの痕跡を残しながらも、新たに写し出される作品として、その内容を変化させる手法を確立させた。」(小野修平著)とあり、これもシュマイサー独特の技法で、同一版を用いてイメージを変化させていく連作は、版画ならではの方法で生み出されたものと思いました。個々の作品を見れば、私の感覚を擽る作品もあり、これに関しての別稿を起こしてみようとも思います。

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