映画「スターリンの葬送狂騒曲」雑感

先日、横浜のミニシアターにイギリス映画「スターリンの葬送狂騒曲」を観に行きました。物語の発端は旧ソビエト連邦に君臨した独裁者スターリンが、1953年に脳溢血で倒れ、そのまま死去し、その後継者を巡って政権内で権力争いが起こるというものです。図録によると「『驚くべき物語が、さらに驚くことに、ほとんど事実』であるために、フランスで出版されるや物議と人気がヒートアップしたベストセラー・グラフィックノベルの映画化が実現。」とありました。また「壮大なのに姑息、大真面目なのに可笑しくて、卑劣で残忍なのに引き込まれる、史上最もドス黒い実話に基づくブラック・コメディである。」という紹介文もありました。スターリンは粛清という大量虐殺を行ったため、その追従者である首脳陣は本音を隠すことが習慣化してしまい、スターリン死後もその亡霊に翻弄される箇所があります。腹心のマレンコフ、秘密警察警備隊トップのベリア、第一書記のフルシチョフが騙し合いや裏切り、裏工作を仕掛けていきます。これは大事件であるにも関わらず、滑稽で卑小な人間関係を映画では浮き彫りにしていくのです。その一つがスターリンが倒れた直後に側近たちは医者を呼ぼうとしますが、有能な医者は獄中か死刑に処されていて、仕方なくヤブ医者を掻き集める場面があり、またそこまで辿り着くまでに手順通りの合議をする場面です。こんな急を要する時に何をやっているんだと気を揉みますが、敢えて時間を費やし、独裁者を死に追いやろうとする周囲の計算も見て取れます。脚本家がこんな一文を寄せています。「あえてコメディに仕上げようとはせず、状況からコメディが生まれてくるようにした。登場する男たちが卑劣な人間なのは明らかだが、その性質が強く出た時でさえ何らかの魅力を感じてもらえるようにしたかった。」この映画は2018年1月にロシア文化省が、歴史映画としても芸術映画としても価値がないとして、封切り3日前に上映中止にした経緯があります。これが上映されていたら、ロシアの人たちはこの映画に対してどんな感想を持ったのでしょうか。

関連する投稿

  • 映画「家に帰ろう」雑感 映画「家に帰ろう」は人気がある映画なのでしょうか。先日観に行った常連のミニシアターが満席になっていたのは初めてでした。アルゼンチンのブエノスアイレスに住む88歳の仕立て屋が主人公の映画で、翌朝にも娘 […]
  • 週末 益子から陶土が届いた日 陶彫を作るためには陶土の調達やら焼き窯等の設備が必要です。道具も多岐にわたっていて、その中には自分で作ったヘラも含まれています。それらは自分の創作イメージを具現化する中で、少しずつ整えてきたものです […]
  • 映画「ボヘミアン・ラプソディ」雑感 先週の金曜日のレイトショーに人気急上昇中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観に行きました。映画になったロックバンドのクイーンは私より上の世代の人たちが熱狂したバンドです。当時学生だった私も日本を席巻 […]
  • 2月最初の週末に… 2月最初の週末がやってきました。今月も新作の陶彫制作に励もうと思っています。今日は大きな新作の根の陶彫部品を作るための土練りやタタラ作りを行いました。午後になって乾燥した陶彫部品に仕上げをし、化粧掛 […]
  • 振替休日 制作&映画鑑賞 今日は天皇誕生日の振替休日になります。言わば三連休の最終日です。今日は過密なスケジュールで一日を過ごしました。朝から工房に行って陶彫成形をやっていました。昨日タタラを準備していたので、今日は冬季休業 […]

Comments are closed.