藤田嗣治流「宗教画」について

「晩年に専念した宗教的主題の作品において、15世紀のフランドル絵画を模範として取り入れたのは偶然ではない。かつて戦争中には同じように、ナポレオン風の身振りが描かれた大作(ジェリコー、グロ、ジロデ、ドラクロア)を参照することによって、フジタは大画面の戦争画の様式を獲得したのだった。~略~より厚みを増して正確さを欠いた描線、白っぽく薄い色彩からは、かつてのような称賛すべき技巧は見られないが、特にフジタが妻の君代とともにモデルとなって描かれている宗教画においては、当惑あるいは居心地の悪さとでもいうべき印象を受ける。~略~彼を特別な存在にしていた、あの魔力、あの優美、あの素朴は失われていた。」(ソフィ・クレブス著)これは「藤田嗣治展」の図録に収められていたパリ市立近代美術館文化財保存統括監督官からの一文です。フランス人からの手厳しい評価と受け取れますが、相互の視野を念頭に入れれば納得できるところもあります。画家藤田嗣治は日本人側から見れば、よくぞ異文化の中で存在感を示したと評価されるところですが、西欧から見ると乳白色の下地に裸婦を描いていた時代以外は、評価に値しないと思われているようです。私は藤田の描いた宗教画に感銘を受けたことがあり、晩年になっても衰えなかった画力に今も惹かれています。美術館だけでなく、各地の教会に点在するキリスト教の宗教画は、長い歴史や層の厚みから私は異文化の最たるものを感じ取って辟易した記憶があります。私にとって宗教とは何か、実家の菩提寺である浄土教にしたって私は認識が足りず、とても宗教なんて作品のテーマに出来るものではありません。私はこの歳になって漸くキリスト教美術の良さを受け取れるようになったのです。藤田は晩年になってどんな思いで宗教画を描いたのか、私は師匠の池田宗弘先生と重なってしまうところがあって、自分なりに考えてみたいと思っています。

関連する投稿

  • レディメイドによる価値転換 東京上野にある東京国立博物館平成館で開催されている「マルセル・デュシャンと日本美術」展について追加のNOTE(ブログ)を起こします。本展のデュシャンの作品全体を改めて眺めてみると、美術史が長い間培っ […]
  • 三連休 美術館&映画鑑賞へ 三連休初日です。夏季休暇が終わり、仕事が始まったこの時期の三連休は、ちょっとした骨休みになって嬉しい限りです。私は公務員管理職と彫刻家の二足の草鞋生活なので、一日中ゆっくり休むことは出来ませんが、そ […]
  • 藤田嗣治流「戦争画」について 先日、東京上野の東京都美術館で開催している「藤田嗣治展」に行ってきました。昨日のNOTE(ブログ)で全体の感想を述べさせていただきましたが、藤田ワールドは乳白色の裸婦像に留まらず、さまざまな絵画表現 […]
  • 三連休 制作&人気の展覧会2ヶ所 今日から三連休です。この三連休で陶彫成形を2個作りたいと考えています。先週末に引き続き、三連休は美術館へ行きたいとも考えていて、今日はその両方を計画していました。陶彫の作業は朝の時間を使って、大きめ […]
  • 茅ヶ崎の「小原古邨展」 先日、茅ヶ崎市美術館で開催されている「小原古邨展」に行ってきました。日本美術史の中で埋没していた芸術家が、これからさらに発見されて脚光を浴びることがあるのでしょうか。江戸時代の絵師伊藤若冲や奄美を描 […]

Comments are closed.