上野の「藤田嗣治展」

日本とフランスで活躍した画家藤田嗣治。今までも幾度となく展覧会で藤田ワールドに接してきました。おかっぱ頭にロイド眼鏡、そんなファッションでエコール・ド・パリの寵児となり、乳白色の下地に繊細な線描で表現した裸婦像で、パリ画壇に存在感を示した唯一の日本人画家、これが藤田嗣治です。また、第二次大戦時に戦争画を描き、その責任を一身に背負って、再びパリに赴き、とうとう国籍まで変えて祖国に帰らなかった画家です。まさに波乱万丈の人生ですが、常に注目される存在だったことは確かです。そこに日本画壇の羨望もあったのではないかと察するところですが、藤田の長い画業を概観してみると、それらの思いが頭を巡る今回の没後50年「藤田嗣治展」でした。藤田特有の乳白色の人物像はどこかギリシャの彫像を思わせるところがあると私は感じていました。図録にこんな箇所がありました。「ギリシャ・ダンスについて『ダンスの形が昔の画、昔の彫刻となってて、つまり線の尤も美しいもの許りで出来てるダンス、これを知らねば本当の画は出来ぬ』と、故国に残した妻に書き送っている。」(高階秀爾著)やはり藤田は絵のためにパリでダンスを習っていたようです。これは最初の妻とみに送っていた手紙ですが、藤田は伴侶をよく替え、父を初めとする理解者にも恵まれていたようです。「藤田は80余年の生涯を父→とみ→フェルナンド→ユキ→マドレーヌ→君代に伴走された、つねに家族に支えられた人生、創作活動に恵まれたといえる。~略~藤田の画作をあらためて見直すと、家族に限らず、二人の人物像が思いのほかあることに気づく。藤田とフェルナンドという男女の組み合わせはむしろ例外で、大半は女性二人である。~略~両大戦間のパリの先鋭的な芸術家たちが共有していた『同性愛』のテーマがある。藤田の二人の女の表象では、いずれも手を握り合ったり、肩を組んだり、『距離』が親密である。」(林洋子著)これも藤田ワールドで私が気になっていたところです。現代になって漸く同性愛は稀有なものではなくなりましたが、こうした頽廃的な雰囲気を感じさせるのも藤田の特徴かなぁとも思いました。戦争画や宗教画については稿を改めます。

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