出雲の「県立古代出雲歴史博物館」

先日、島根県の出雲大社を訪れた際、広大な敷地内に「島根県立古代出雲歴史博物館」がありました。炎天下を避けて同館に入った時は、空調が効いている室内にホッとした記憶が甦ります。同館の展示物で印象的だったのは出雲大社の精密な神殿模型で、建築学の研究者たちによる5体の推定復元案は見れば見るほど興味関心が尽きませんでした。古代日本の形成発展に出雲神話が重要な役割を果たしていたことは、天平時代にまとめられた「出雲国風土記」で明らかになっています。さらに平安時代に書かれた「口遊」には、巨大な建造物に「雲太」「和二」「京三」が挙げられています。「雲太」とは出雲大社本殿、「和二」とは奈良の大仏殿、「京三」とは平安京の大極殿を指します。大仏殿の高さは約45mで、出雲大社はさらに高かったという伝承は本当でしょうか。発掘調査で出雲大社境内から巨大な杉柱を3本組んだ遺構が発見されて、考古学や建築学の分野で論争が起きました。私はこうした推定が大好きで、自分でもあれこれ考えてみたくなるのです。その他同館で印象深かったのは、夥しい数の銅鐸や銅矛・銅剣の展示です。壁一面にぎっしり並べられた銅矛・銅剣に圧倒されながら、整然とまとめられて埋めてあった青銅器は、なぜそうした方法で埋めなければならなかったのか、謎に包まれています。時代は弥生時代、大陸から製造方法が齎され、日本では武器よりも祭器に利用された形跡があるようです。これも建造物同様、私の眼を釘付けにしてしまいました。個人的に「島根県立古代出雲歴史博物館」は刺激的だったと思い返しています。

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