魯山人とノグチの共通性

現在読んでいる「イサム・ノグチ 庭の芸術への旅」(新見隆著 武蔵野美術大学出版局)の中に北大路魯山人とイサム・ノグチを比較して論じている章があって、興味関心を持ちました。昔、この2人の芸術家を扱った展覧会があって、どうやら筆者はその関係者であったらしいのです。北大路魯山人とイサム・ノグチ、この2人に共通するものは諸芸術を総合した美意識を持っていたことで、さまざまな分野において優れた業績を残しています。本文から拾うと「モダニズムもアヴァンギャルドも、へったくれもない。生で裸の人間の世界があり、とりつくろった芸術の言い訳など許されない、生きることへの真摯さがそこにはある。たしかに魯山人は、モダンだ。作陶のほとんどを古陶磁の写しに終始したことも、前衛の創造性など鼻にもかけない、逆説的なモダニティーと言える。~略~かたちは、心のあり方いがいのものではない。さもしさと温かさ、傲慢と小心、そして野放図と繊細。これらはじつは相反する性癖でなく、磨かれた真の個性のなかでは、稀有なかたちで共存するものだということが、魯山人を見るとわかってくる。」という箇所は、北大路魯山人の創作へ向かう姿勢を描いています。それに続く文章で「じつはこれらの感性は、まったくノグチその人にもぴったりとあてはまるものなのである。ともに根なし草だが、それは強靭な根なし草であって、あらゆるものにこだわりがなく、屈託もないが、孤独で自由だ。」とあります。生い立ちからくる自由な精神、これが時代を経ても新鮮な感動を私たちに齎すものなのでしょうか。

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