2点の印章を彫る

私は予てより印章が持つ小宇宙に惹かれています。日本画や書を見る時に必ず印章にも注目しています。画家が創作する印章はとりわけ面白くて、小さな場面に個性が溢れんばかりです。単純だからこそ奥が深いのかもしれません。私も印章を作品証明とともに芸術作品として捉えていて、楽しみながら小宇宙に遊ぼうと思っています。昨年、台湾の故宮博物院を訪ねた時に、作品に押された印章に目が留まりました。その時は印章の歴史を学びたいなぁと考えていましたが、いまだにその勉強をしていません。古くは中国の戦国時代から秦の時代にかけて印章がカタチを成したようで、歴史を紐解くと面白いだろうなぁと思っています。しかしながら私の作る印章は、歴史的蓄積やルール無視のアートそのものです。自分の氏名を分解して、画面全体に線が縦横に走る抽象絵画にしてしまっています。まさに印章は版画です。文字の周囲を彫る陽刻と文字を彫る陰刻、そのどちらも採用していますが、最近は陽刻が増えています。これは自分の好みの問題で、陽刻がすっきり見えて自分の趣向に合っていると思っているからです。今晩から2つの印章を彫り始めました。1年1回のことですが、印床に印材を設え、印刀を振るうのは久しぶりでワクワクします。一晩でひとつずつ彫り上げていけば、来週末の図録撮影には間に合うかなぁと思っています。その時には若いスタッフが数人集まるので、組立てを分かり易くしておく必要があります。そうした便宜性と自分の楽しみを両立させるのが印章なのです。

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