映画「北斎」雑感

先日観に行った映画の正式タイトルは「大英博物館プレゼンツ 北斎」と言います。江戸時代の絵師葛飾北斎の大掛かりな展覧会「Hokusai:Beyond the Great Wave」が、2017年5月から8月にかけてイギリスの大英博物館で開催され、それが契機となって、この映画が作られました。イギリス人スタッフが捉えた展覧会の舞台裏や、北斎絵画の学術的な検証、北斎の人生を読み解く考察など、北斎ファン(というよりオタク)を満足させるに足る充実した内容になっていました。私たち日本人にとって浮世絵は海外に比べれば身近です。私は幼い頃に、お茶漬けの袋についてきた浮世絵カードを集めていました。あれは広重だったっけと思い出していますが、絵そのものにはたいして気も留めていませんでした。ヨーロッパの印象派の画家が浮世絵を模写していることを知って、浮世絵の凄さを理解しました。西洋絵画から見れば、線の卓抜さ、面取りの大胆さ、色彩の微妙な美しさは注目に値する表現だったわけです。とりわけ北斎の奇抜さが群を抜いていて、まさに奇想の画家の代表格に相応しい画業だったと考えられます。映画の中で、北斎は6歳から絵の手習いを始め、死の床につくまで一日たりとも絵筆を握らない日はなかったという台詞がありました。晩年になるほど表現が冴えわたる北斎は、90歳代になっても寿命があと何十年あれば自分は一端の画家になれると言っていたそうです。イギリスの芸術家D・ホックニーは「偉大な芸術家は年を重ねるごとに進化する」と北斎を評価していましたが、私も見習うべきは北斎の創作への貪欲な姿勢だと常々思っています。僭越ながら私もRECORDをやっているので、毎日絵筆を握っています。ついでながら陶彫に関しては、私も長生きをしなければ、自分の求めるものが出来ないと実感しています。そういう意味で映画「北斎」はイギリス人の素晴らしい視点と考察によって、私に生きる勇気をくれた映画だったと言っても過言ではありません。

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