竹橋の「横山大観展」

先日、東京竹橋にある東京国立近代美術館で開催中の「横山大観展」に行ってきました。横山大観は、我が国の近代画壇では抜群の知名度を誇る日本画家ですが、経歴を辿ると決してアカデミズムの本流を歩んできたわけではなく、寧ろ在野で存在感を示した巨匠でした。本展は生誕150年の記念展として企画されたもので、青年期から晩年に至る大観の画業をまとめて見ることのできる貴重な機会と言えます。大観は東京美術学校1期生で、岡倉天心の薫陶を受け、また奇抜な発想で人を驚かすのが好きだったようで、なかなか魅力的な人ではなかったかと思われます。今更何を言っているのかと思われますが、青年期の絵画を見て、私は改めて大観の卓抜した描写力に驚きました。晩年になって表現が象徴化していった時も、並行してモチーフを入念に描写していた作品がありました。対象をどのように表すか、大観が一貫した研究を行っていたことを示す資料作品を見て、私は背筋が伸びました。図録にあった文章を拾ってみます。「明治期の朦朧体の試みの中で、大観は大気や光を通して見た対象の描写に関心を寄せていた。対象の描写に対する意識は、明治期と手法は違えども、大正期においてもこのように一貫して大観の中に存在し続けたといえよう。~略~若い世代が新たな表現を模索する中で、大観は『只独り東亜の芸術、力ありてこそ新しき日本建設の先駆となる事、此こそ再び世界に闊歩するのを堅く信じ』、日本画の復興に務めようとした。」(中村麗子著)また私が興味を持った箇所に画家の比較論があります。「竹内栖鳳はリアリステックであり(中略)横山大観はアイデアリスチックであり(中略)それは栖鳳が純粋京都人として、商人の子として生れ活きた境涯と、四条円山派の現実的写実主義の芸術教育に影響せられた結果に因して居る時、横山大観はあの勤王尚武の精神の熾んであった水戸藩士の子として生まれ、橋本雅邦や岡倉覚三等の東洋的理想主義に薫陶され、影響された結果に因している」(豊田豊著)嘗て竹内栖鳳の大きな展覧会を東京国立近代美術館で見ました。現在、同美術館で横山大観の大きな展覧会をやっていて、東西巨匠の因縁を感じています。画風は違えども画面から発せられるオーラは甲乙つけ難い迫力を持っています。横山大観の個々の作品については別稿を起こすことにしました。

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