名作誕生「つながる水墨」

先日見てきた東京国立博物館の「名作誕生」展の中で、初めに自分が興味を持ったのが、日中花鳥画の変遷がわかる展示でした。中国・明時代の画家呂紀や殷宏は緻密な世界観を作り上げていたのに対し、雪舟や元信は画面の象徴化を図っていました。満遍なく描かれた風景に対し、無地をも厭わない取捨選択をした風景、「漢」と「和」の饗宴とも感じられた一区切りの空間のなかで、自分は暫し佇んでしまいました。中国の源泉があったからこそ、独自の発展が望めた日本の絵画。図録にこんな一文がありました。「元信が口にした源泉のなかで、最も甘露のごとく感じたのは、中国・明時代最高の花鳥画家、呂紀の作品であったろう。呂紀の代表作である、四幅対の『四季花鳥図』と比較してみれば、エネルギーに満ちる明晰なフォルムと華麗な色彩、遠小近大の理知的構図において、元信が呂紀を継承したことは、火を見るより明らかである。」(河野元昭著)また、元信のすっきり整理された花鳥図を見ていると、元信が中国絵画はおろか、雪舟までを参考にして、狩野派の世界観を構築していった様子が伝わります。「両者を比較して、雪舟が明で学んだものと拒否したものを考えるのは興味深い。四季花鳥図屏風でモチーフが画面の奥へ重なり、垂直方向の深さを強調する構成(右隻右端)や、松や梅が激しく屈曲しながら画面の外に出て折り返して画面のなかへ戻る構成などは、呂紀の四季花鳥図や殷宏の花鳥図を思わせる特徴である。~略~狩野元信の四季花鳥図は、雪舟画を大画面の花鳥画の規範と受け止めたうえでモチーフを詰め込まず、奥に重ねるよりも左右に広げ、激しい形の屈曲もゆるめ、おだやかな画面を作っている。元信は、雪舟を、ひいては明時代の花鳥図を仕立てなおしてみせたのである。」(佐藤康宏著)

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