映画「ぼくの名前はズッキーニ」雑感

アルコールやドラッグ中毒、育児放棄、性的虐待、犯罪や移民問題など現代社会を取り巻く問題は、国が変われど、どこでも存在する困難な課題です。ましてや幼い子どもたちにとっては、その後の人生を左右する忌々しき問題です。子どもを主人公にして、そんな厳しい社会環境を描いた実写映画は、過去幾つかありましたが、先日観に行った「ぼくの名前はズッキーニ」は、同じ問題を扱ったストップモーション・アニメーションでした。三頭身の人形やその背景は、パステルカラーの美しい色に彩られたデザイン性に長けたもので、単純な造形だからこそ、逆に内容がストレートに伝わるものに仕上がっていました。主人公イカール(愛称ズッキーニ)は自分のせいで母親が死んだと思い込み、孤児院に連れてこられます。そこには既に5人の孤児がいて、当初は親分格のシモンにいじめられますが、次第に2人は心を通わせるようになり、親友になっていきます。そこにカミーユが入園してきます。カミーユも悲惨な成育歴がありましたが、ズッキーニはカミーユに恋心を抱き、子どもたちの絆は深まっていくのでした。シモンの機転でカミーユは意地悪な叔母から救い出される痛快な場面もありました。そのうちズッキーニとカミーユに養子縁組がやってきて…というストーリーはメランコリックであっても、明日への希望を繋ぐ印象を私に残しました。人形たちの大きな目がキョロキョロ動き、表情豊かな仕草にも愛らしさが感じられました。私は彫刻をやっているせいか、こうした作りものが大好きで、1コマ1コマを情熱を持って撮影されたスタッフにも拍手を送りたいと思います。

関連する投稿

  • 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
  • 映画「JUNK HEAD」雑感 昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK […]
  • 創作一本になった4月を振り返る 今日は4月の最終日なので、今月の制作を振り返ってみたいと思います。今月の大きな出来事は、長年続いた教職公務員との二足の草鞋生活にピリオドを打って、創作活動一本になったことです。これは自分の生涯の転機 […]
  • 映画「異端の鳥」雑感 先日、川崎駅前にある映画館TOHOシネマズへ「異端の鳥」を観に行ってきました。本作を私は新聞で知りましたが、上映館が少ないため自宅近くの映画館を探して、しかも深夜の時間帯に行ってきたのでした。家内が […]
  • 映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」雑感 昨晩、家内と横浜市都筑区鴨居にある映画館に、今話題となっているアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観てきました。「新世紀エヴァンゲリオン」は20数年前に社会現象となり、私もそのアニメーション […]

Comments are closed.