彫刻家の密室劇

画家やデザイナーと違い、彫刻家は立体制作が可能な工房を持っている人が多いと思います。彫刻はパソコンだけで創作できるものではなく、実材と向かい合っているだけに、例えば工場のような無味乾燥な作業場や、野外での広漠たる場所があったりして、その素材によって場所や施設が異なってきます。相原工房には窯や土練機が備えてあります。作業台が6台、回転台を初めとする陶彫用の道具は数多くあります。木彫用の万力や電動工具もあります。作業台の一部と大きめなイーゼルはスタッフたちが使っています。工房では坦々と作業を進めていますが、時に気分が高揚したり、落ち込んだり、心の叫びがつい飛び出してしまうことがあります。工房はただの空間ではないなぁと自覚しています。スタッフも制作中は自分の殻に閉じ籠っているので、他人のことなど見えていません。そんな工房でのドラマが展開する映画を、最近よく観ています。登場するのはいずれも彫刻家の巨匠たち。「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」は、近代彫刻界に絶大な存在を示したロダンの生涯の一幕を取り上げていました。ロダンの工房は、国から借り受けた広大な大理石保管所で、そこに働く人たちや愛人との関係を生き生きと描いていました。「ジャコメッティ 最後の肖像」は、晩年のジャコメッティの小さな工房が舞台でした。ジャコメッティは現代彫刻で独自な世界観を築いた巨匠でしたが、古く薄汚れた空間の中で、妻や弟、娼婦である若い愛人に囲まれて暮らしていました。ロダンにしてもジャコメッティにしても映画の中では、まさに密室で展開する内面の葛藤を余すところなく描いていて、ドラマとは言え、自己表現を全うするために常軌を逸していると感じます。そんな巨匠たちの生きざまは、厳しくも豊かな内容を私に提供してくれるのです。

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