「絵の証言」読後感

「絵の証言」(佃堅輔著 西田書店)を読み終えました。本書に取り上げられていた23人の芸術家の中から8人をホームページのNOTE(ブログ)にアップしました。23人の芸術家のうち日本では比較的知名度が定着している芸術家がいる一方で、私も知らなかった人もいました。生前のご本人を見たことがあるのはルードルフ・ハウズナーだけです。と言ってもウィーンの学校の廊下ですれ違っただけで、声もかけられなかったのでした。23人に対して言えば、全員が国際的な名声を得ていないだけで、いずれの芸術家もその時代の代弁者であることに変わりはありません。その時代を知り、そこで追求した造形的主張や表現の在り方を考える上で、本書は私にとって大変有意義な書籍となりました。日本の書店は美術専門書があまり売れないことがあって、棚の片隅に追いやられ、書籍そのものが無くなってしまう傾向にあります。東京の大きな書店に行った折に、あれもこれも仕入れてきますが、私などは僅少の読書家だろうと思います。その中でも北方ヨーロッパの近代美術に関する書籍は貴重です。自分が若い頃に生活した彼の地の空気感を知っているだけに、本書は北方ヨーロッパの曇り空が垂れ込める鬱陶しい季節とともに、不安定な時代背景に苦しんで孤軍奮闘していた芸術家を思い起こさせます。文化の違いこそあれ、それは日本でも同じだったのではないかと考えています。

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