初台の「谷川俊太郎展」

画家や造形作家が詩人とコラボレーションした展覧会は何度か見たことがありますが、一人の詩人による美術館での個展は、私は初めて見たように思います。詩人がどのような展示を行うのか興味津々で、先日、東京初台にある東京オペラシティアートギャラリーに行ってきました。日本では一番有名な詩人の展覧会だけのことはあって、会場は思っていたより混んでいました。コトバを脳裏に刻んで、非日常に浸りたいと考えているのは私だけではないようでした。事実、大きな白い部屋の壁に書かれた一篇の詩を読みながら、頭の中でイメージした世界に一人で浮揚している時は、私の周囲から全てのモノが消え失せていました。コトバはイメージを喚起させるので、絵画や彫刻あるいは音楽や演劇等と同じ精神性をもったものと言えます。私が彫刻をイメージする源泉には詩が存在していると思っています。高校1年生の時、国語の教科書にあった詩に惹きつけられ、なんとなく詩人になりたいと思った当時を振り返ると、まだ本格的に美術の勉強を始める前に、私には詩があったのでした。その印象で一番強かったのが谷川俊太郎氏のひらがなによる不思議な響きの詩でした。「かみさまとしずかなはなしをした」というフレーズを15歳の時から50年近く経った今も覚えていて、そこから私の造形イメージが育まれていったのかもしれません。展覧会で気に留まった詩の断片を書いてみます。「言葉どもに揉まれながら暮らしてきましたから どちらかと言うと無言を好みます」「いのちは死ぬのをいやがって いのちはわけの分からぬことをわめき いのちは決して除かれることはない」「いつもとかわらぬゆうぐれである あしたが なんのやくにもたたぬような」…うーん、これくらいにしておきますが、言葉にはそれぞれ前後があります。断片だけ拾い上げてもイメージは薄れるのかもしれませんが、それでもコトバの力を私は感じます。

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