上野の「ブリューゲル展」

先日、東京国立博物館に行った折に、近くにある東京都美術館に足を延ばし、同館で開催中の「ブリューゲル展」を見てきました。ブリューゲルと言えば、私は若い頃滞在していたウィーンの美術史美術館で見ていた、民衆をパノラマにして描いた幾つもの大作を思い出します。美術館のコレクションの中で、ブリューゲルの作品群のある部屋が一番好きで、何度も訪れては飽くことなくブリューゲルの世界に親しんでいました。今回展示されていた「鳥罠」は、ウィーンで見た「雪中の狩人」を連想させるし、「野外での婚礼の踊り」は、やはり有名な「農家の婚礼」や「農民の踊り」を彷彿とさせます。また、ブリューゲル1世は同じフランドルの画家ヒエロニムス・ボスに通じる世界観があり、私が魅了されてしまう要因にもなっています。図録にもこんな箇所がありました。「ピーテル1世は聖俗の対立や信仰と迷信の闘争を効果的に喚起するボスの幻想的な絵画にあまりにも魅了されたので、『第二のボス』と定義されるほど同じ様式で絵画や版画を制作した。~略~ピーテル2世はとりわけ人々を非難する表現はせず、いわゆる質素な生活に注目し、むしろ寛大な眼差しを向け、不器用で無邪気な、そしてそれゆえ真に人間的な日常を共有した。~略~ヤン2世の弟アンブロシウス・ブリューゲル、そして息子のヤン・ピーテル・ブリューゲルは寓意画や静物画を制作し続け、人々はそれらを直ちに『ブリューゲルの様式』と結びつけた。」(セルジオ・ガッディ著)子孫3世代にわたるブリューゲル一族の展覧会は、ローマやパリでも開催されたようで、鑑賞者を惹きつける要素が満載です。その分野は宗教画、風景画、風俗画、寓意画、静物画など多岐にわたっていて、それぞれの技量には眼を見張るほどで、思わず引き込まれてしまいます。私個人としてはピーテル1世の、ボスに見紛う作品が大好きで、ブリューゲル様式の出発点となった初期作品群に惹かれます。とくに版画は幻想に満ちていて、その創造力に驚いています。こんな世界観が好まれた時代とは、どんな時代だったのでしょう。イメージ力は現代と変わらないのではないかとさえ思ってしまいます。

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