上野の「仁和寺と御室派のみほとけ」展

先日、東京上野の国立博物館平成館で開催中の「仁和寺と御室派のみほとけ」展を見てきました。副題が「天平と真言密教の名宝」となっていて、本展は、京都の仁和寺を総本山とする御室派全国約790寺から精選された名宝を集めた展覧会なのです。私が訪れた時期は、見所の一つになっている葛井寺の千手観音菩薩坐像はまだ展示されていませんでしたが、仁和寺創建の本尊である阿弥陀如来坐像および両脇侍立像をじっくり見ることができて満足を覚えました。驚いたのは仁和寺観音堂が館内に再現されていたことでした。これは仁和寺の大修理事業完了による記念展だそうで、まるで伽藍の中にいるような錯覚を持ったのは私だけではないはずです。仁和寺は、宇多天皇即位時の西暦888年に完成した真言密教の寺院です。真言宗とは、空海により中国から齎された密教の教えで、本展に両界曼荼羅も展示されていました。図録によると、阿弥陀如来坐像および両脇侍立像に関わる部分として「現在、仁和寺が真言宗寺院であることや、中尊の阿弥陀如来像が密教的な性格をもつ定印を結ぶことから、本像が密教修法の本尊として造られたとする見解が強いようである。」(皿井舞著)とありました。私が個人的に展示品の中から造形として好きになったのは「馬頭観音菩薩坐像」でした。福井県の中山寺から出品された菩薩像で、解説によると「品よくまとまった忿怒相や脇面の面長な顔形などは、たしかに運慶次世代の慶派の作風に通じるものがある。」とありました。運慶フアンの私としては頷けるものがありました。

関連する投稿

Comments are closed.