映画「日曜日の散歩者」雑感

先日、常連になっている横浜のミニシアターに台湾映画「日曜日の散歩者」を観に行ってきました。1930年代から戦後に至る文学界の動向の中で、西洋のモダニズムが席巻した時期があり、台湾から日本に留学した一部のエリートの中に、そうした前衛詩を日本語で創作した人々がいました。この映画は近代史の狭間に生き、忘却の憂き目に遭った詩人たちを追ったドキュメンタリーで、その時代の風潮を知らなければ、難解極まりない映画だと思います。私はシュルレアリスム以後の世代として、若い頃に知識として戦前の芸術運動を知っていたので、映画の手法であるシュルレアリスム的な場面展開が理解できました。それにしても他では類を見ない特異で不思議な映画のため、早速図録を購入し、映画の背景として評論家が考察していることが知りたいと思いました。図録から抜粋いたします。「植民地の地方都市で、詩を、それも芸術至上主義の前衛詩を作る。それは、呼べども応える声もない寂寥と、内から溢れる創作欲との闘いだったといってもよい。~略~盛況と粗製の台湾映画界において、『日曜日の散歩者』は、一つの違和感の表明である。風車詩社に関する綿密な取材と研究成果にもとづきながら、シュルレアリスムの古典的な手法を用いて、シュルレアリスムの詩人たちの人生を描く。映画では日本語・英語・中国語が混在するだけではなく、複雑なシャッフルによって次元の異なる映像が提示される。そもそも詩が、映画が、どのような表現でありえるのかを問い直しているのである。その挑戦は、1930年代の詩人たちの挑戦と重なる。」(大東和重著)

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