金沢文庫の「運慶」展

先日、横浜市金沢区にある神奈川県立金沢文庫に「運慶」展を見に行ってきました。現在の金沢文庫は、北条実時創建の旧金沢文庫を顕彰・継承するために昭和5年に設立されました。設立80周年の平成22年に運慶の特別展をやっていて、今回は2回目の特別展として「運慶ー鎌倉幕府と霊験伝説ー」が開催されているのです。金沢文庫と運慶像の関連は、同文庫が保管する「大威徳明王像」が運慶作品と判明したことにより、その研究が深まり、運慶派と呼ばれる仏師たちを加えて、今回の展示になったようです。「大威徳明王像」は資料によると運慶最晩年の作品とされていて、よく見れば運慶独特の面貌の恐ろしさや端正な造形があって、頷ける要素が満載でした。横須賀の曹源寺に伝わる「十二神将立像」にも迫力があって、当時は運慶派仏師による模刻の流通が行われていたようです。曹源寺の「十二神将立像」の中ではとりわけ巳神が優れていて、解説によると巳年生まれで同寺で安産祈願が行われた源実朝との関係があるのではないかという説が呈示されています。私が関心を寄せる舞楽面に関しては、鎌倉鶴岡八幡宮では創建時からまもなくして楽所が整備されたことから、そこに施入されたものではないかと思われ、造形的な要素からすれば運慶派の仏師による制作と考えられます。もはや運慶はその造形からして、仏師から一歩踏み出した彫刻家の技量にあったと私は考えています。運慶派と呼ばれる周辺の仏師たちにもその造形力が問われたために、模刻を通して多くの仏像が芸術品としての美意識を持っていると察しています。学生時代まで興味がなかった私に、仏像の魅力を教えてくれたのが運慶だったことを考えると、まさに運慶はミケランジェロと並ぶ国際的な彫刻家ではないかと言っても過言ではないと思っています。

関連する投稿

  • 三連休③ 美術館巡り&ビール祭り 三連休の最終日になりました。今日は工房へは行かず、家内と東京と横浜の美術館を巡ることにしました。師匠の池田宗弘先生は自由美術協会の会員で、例年この時期に先生から招待状が届きます。そこで今日が自由美術 […]
  • 金曜日の夜は美術館へ 国公立美術館の金曜日は20時まで開館していて、仕事をしている者にとってこれは有り難い延長時間になります。週末を目の前にして、ぐったり疲れた身体を引きずって東京の美術館へ行くのは厳しいと思う面もありま […]
  • 週末 美術館を巡った一日 今日は久しぶりの美術館巡りの一日を過ごしました。何度もNOTE(ブログ)に書いてきましたが、制作と鑑賞は表裏一体で、自分の思索を深めるのに展覧会に行くのもそのひとつなのです。自分にとって作品に出会う […]
  • 三連休 高松市街の散策 昨日から香川県高松に来ています。泊まったビジネスホテルは街の中心である兵庫町にありました。今日は市街を徒歩で周ることにしました。アーケードのある商店街を散歩して、朝9時半に高松市美術館に着きました。 […]
  • 葛西の「堀内正和彫刻展」 日本の抽象彫刻の先駆者堀内正和に生前一度お会いしたことがあります。大学で彫刻を学んでいた頃、かれこれ30数年前になりますが、「彫刻の森美術館」と「池田20世紀美術館」を設計した井上武吉先生を講師にし […]

Comments are closed.