「オブジェを持った無産者」読後感

「オブジェを持った無産者」(赤瀬川原平著 河出書房新社)を読み終えました。著者である故赤瀬川原平は、尾辻克彦という名前で芥川賞を受賞したり、話題となった随筆を出して、文才に長けた造形作家であることは疑う余地はありません。話題となった「老人力」はとてつもなく面白く、出版した年の流行語大賞を取っていました。テレビに主演したご本人の弁は、ウキウキするような楽しさに溢れていました。その赤瀬川原平による最初の出版物が「オブジェを持った無産者」です。ところが既読の書籍にみる平易で楽しかった文章が、初期の頃は超現実的な難解さで、時に暴力的な詩情を感じさせていたので、少々面食らってしまいました。若い頃は既成概念をひっくり返す前衛美術家としての意思が宿っていたのだろうと察します。あとがきにこんな文章がありました。「私が文章を掻きまわすようになったひとつのポイントは、1960年に”ネオ・ダダ”のグループをつくったときの、はじめての解放感である。いったん『絵具』を手離してみると、ヌレ手にアワという感じで、あらゆるものがひっついてきた。そしてそのとき、ことさら廃品によって作品としていた勢いもあるかもしれないが、いわば落ちているものはなんでも拾えるという私の中での群集心理によって、道ばたを闊歩していた。」さらに一冊の書籍がまとめられたのは、「千円札裁判」によるものと著者は述べています。社会的制約と表現の自由、当時の前衛芸術運動がここから展開していきました。私がもう少し早く生まれていれば、なんて思う時代がそこにはありました。

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