京橋の「サイトユフジ展」

一昨日、東京の京橋にあるギャラリーユマニテで開催中の「サイトユフジ展」に行ってきました。サイト(斎藤)さんは山形県出身でオーストリアのウィーンに長く滞在し、ウィーン幻想派が好んだ古典技法を自らも取得し、細密な絵画表現に挑んできました。現在もテンペラを使った絵画を制作されていたので、サイトさんの絵画を見ていると当時が思い出されてきました。海外生活は、雑多な情報が入らないため、静かで落ち着いた環境で制作が出来ます。サイトさんが大きな画面に小さな蟻の群がる風景を蟻一匹ずつ丹念に描き込んで表現したり、画面いっぱいの蜂の巣に蜂の大軍を描き込めたのは、そうした環境が大きかったのではないかと思っています。今回の新作にはドイツの画家デューラーの版画から触発された動物のサイが描かれていて、西洋古典の中に現代性を求めるサイトさんの世界観がよく表れた作品だなぁと思いました。最新作では、対象が昆虫や動物ではなく、夥しいアルファベットが散りばめられた作品があって、具象から一歩抜け出した展開になっていました。アルファベットは文字として意味を与えられたモノがあったり、無意味な羅列もあったりして、文字としての記号を問う危うさが絵画空間に浮遊していました。画家クレーによる象形文字のような絵画にも通じる面白さがあり、私は最新作を歓迎しました。サイトさんに会えば、ついウィーン時代の話になってしまい、亡くなられた奥様のことを思い出してしまいます。近いうちに山形に行って奥様のお墓参りをさせていただこうと思います。

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