「国宝菁華」について

夏に台湾に出かけた目的は、國立故宮博物院の所蔵する宝物を鑑賞することでした。宝物はどれもが素晴らしく、すべての作品を目に焼き付けておきたいと思いましたが、その数の多さに圧倒されて、所蔵品の資料を求めてミュージアムショップに駆け込みました。ショップでは日本語に翻訳された資料の中で所蔵品を網羅している書籍がないものか探してみましたが、全所蔵品を一冊にまとめることは不可能だろうと思いました。おまけに日本語の書籍が少なかったので、自分が興味関心を覚えた分野に限ってショップに並んでいたものを物色していました。「国宝菁華」は日本語に翻訳された冊子の中で「器物篇」と「書画・図書文献篇」の2冊がセットになっていて、重厚な装いが気に入りました。これには主だった所蔵品が掲載されていて、図版も鮮明だったので購入してきました。今も「国宝菁華」を飽くことなく眺めています。自分が興味関心がある西周晩期の銅製品に彫り込まれた古代文字の美しさが目に留まります。古代文字を使ってどんなことが書いてあるのでしょうか。先月のRECORDは「ひびく」というテーマでしたので、心に響いたこれらの作品を描きました。水墨画では誇張されたところがなく、精密な写実に基づいた描写が目立ちます。日本のデフォルメされた世界とは違い、現実の生活を描いているように感じます。しみじみとした味わいが漂っていて、歴史に裏打ちされた確かな表現力が伝わってきます。私たちが考える東洋的で高いレベルを持った作品群がここにあります。

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