横須賀の「デンマーク・デザイン展」

横須賀美術館は海に面した美しい景観をもつ美術館です。今まで何回か訪れた中で、今回の展覧会は美術館の美しい雰囲気をそのまま投影したような洒落た内容で、若い女性スタッフを連れた私は、ちょっといい気分で「デンマーク・デザイン展」を見ることが出来ました。デンマークのデザインは個性を強烈に出すものはなく、全てが洗練され、使い勝手が良さそうなモノが並んでいました。室内全体を統一したトータル・デザインがスタンダードな形で生活の中に馴染んでいるような印象を受けました。枠に囚われない現代アートの展覧会を見てきた者の眼には物足りなく感じられがちですが、じっくり鑑賞するとデンマーク人のデザイン性の高さが分かります。図録によると「大きなものから小さなものまで、デンマークには優れたデザインが数世紀にわたって浸透しています。それはデンマーク・デザインの特質であり、そしてそれこそが社会を支える力を育んできたのです。こうした視点に立てば、デンマーク・デザインは福祉国家の物理的な等価物といえます。」(アネ=ルイーセ・ソマ解説)とありました。また「古くから無駄を省いたプロテスタントの農耕文化であったデンマークでは、単純さの追求と素材の最適な活用は自然なことでした。デンマークが巨万の富によって特徴づけられることは決してありません。そして単純さと合理的な素材の適用は、インターナショナル・スタイルの特徴であるミニマリズムにうまく合致しました。」(クレスチャン・ホルムステズ・オーレスン解説)とある通り、デンマークは合理的でシンプルな魅力に溢れたモノを昔から作り出してきたと言えそうです。

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