映画「ムーンライト」雑感

先日、橫浜市中区にあるミニシアターで米映画「ムーンライト」を観てきました。この映画はアカデミー賞授賞式の際に作品賞を間違えられたエピソードがあり、賞レースで心躍る完成度の高いミュージカルに競り勝った映画です。映画を観た感想は「ラ・ラ・ランド」の対極とも思える内容に、賞はどちらが取ってもおかしくないのではないかと思いました。「ムーンライト」の場面設定は困窮した家庭と麻薬によって引き裂かれた母と息子、その息子を取り囲むいじめ集団が描かれていて、この上なく悲惨な環境がありましたが、それを超越する愛と美しい映像と情感のある音楽によって人間味溢れる傑作になっていました。主人公シャロンは小学校時代、仲間からいじめられていて、駆け込んだ廃墟でファンに助けられます。それが契機となりファンと同居している恋人のテレサがシャロンの心の拠り所となりましたが、ファンは麻薬のディーラーで、シャロンの母親にも麻薬売買を仄めかされていました。高校に入ったシャロンは相変わらず、いじめを受けていましたが、テレサに諭されたり、親友のケヴィンとの親密な関係で自分を保てていました。シャロンは同性愛者でもあったのでした。ところが親友が絡んだ事件を起こしたところで場面は一転します。大人になったシャロンはファンのような麻薬のディーラーとなって、筋骨逞しい男になっていました。久しぶりにケヴィンから連絡があり、2人は再会しますが、別の人生を歩んできた2人にもう一度訪れた親密な状況…。シャロンのアイデンティティを探し求める旅がこの映画の大きなテーマであろうと思います。黒い肌は月の光でブルーに輝くという詩情が、視覚的要素を伴い、深く印象に刻まれました。

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