映画「人生タクシー」雑感
2017年 5月 2日 火曜日
先日、常連になっている橫浜市中区のミニシアターにイラン映画「人生タクシー」を観にいきました。芸術表現を抑制されている国にいて、自由闊達にカメラを回すジャファル・パナヒ監督。監督自らタクシーの運転手に扮し、乗り合わせた客から様々な呟きを引き出し、現在の社会情勢を微妙な風刺で彩る映画の手法は、語る人物によって面白くおかしい台詞が満載でした。社会的な矛盾を孕んだ現状を露見させたこの映画を、彼の地の政治家はどう見ていたのでしょうか。案の定、映画は国内での上映禁止の憂き目に遭い、何かの手段を使って海外に持ち出して、名のある国際映画祭で賞を獲得するに至った事実を知ると、権力による抑圧がパナヒ・ワールドを培ったとも言えます。これは「人生タクシー」に限ったことではなく、パナヒ監督のあらゆる映画がヴェネチアやカンヌ、ベルリンの国際映画祭で評価されているのは、芸術表現を誰も阻むことが出来ないことを如実に物語っているように思います。テヘランの市街は一見自由に見えるのに、「俗悪なリアリズムってどういうこと?現実を撮りなさいと教えといて、暗くてイヤな現実は見せちゃダメ、って意味判んない。」と監督の姪っ子がタクシーの中で、学校で出された映像の課題について吐露する気持は、現実の社会に投影されていて、私たちは映画の中の彼女の姿に一気に引き込まれていったのでした。
関連する投稿
- 新作完成の5月を振り返る 今日で5月が終わります。今月は個展図録用の写真撮影が昨日あったために、これに間に合わせるために夢中になって制作に明け暮れた1ヶ月だったと言えます。31日間のうち工房に行かなかった日は2日だけで、29 […]
- 映画「JUNK HEAD」雑感 昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK […]
- 創作一本になった4月を振り返る 今日は4月の最終日なので、今月の制作を振り返ってみたいと思います。今月の大きな出来事は、長年続いた教職公務員との二足の草鞋生活にピリオドを打って、創作活動一本になったことです。これは自分の生涯の転機 […]
- 映画「異端の鳥」雑感 先日、川崎駅前にある映画館TOHOシネマズへ「異端の鳥」を観に行ってきました。本作を私は新聞で知りましたが、上映館が少ないため自宅近くの映画館を探して、しかも深夜の時間帯に行ってきたのでした。家内が […]
- 映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」雑感 昨晩、家内と横浜市都筑区鴨居にある映画館に、今話題となっているアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観てきました。「新世紀エヴァンゲリオン」は20数年前に社会現象となり、私もそのアニメーション […]
Tags: 映画
The entry '映画「人生タクシー」雑感' was posted
on 5月 2nd, 2017
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.