週末 彫り込み加飾の一日

朝から工房に篭りました。今日は中国籍のスタッフが工房にやってきました。たった一人で作業するのと、誰かがいる場合では、作業の雰囲気が変わります。休憩を取った時に喋る相手がいるのはいいなぁと感じます。彼女は来日して数年が経ち、日本語に堪能ですが、まだ日本語ではストレスがあると言います。私は20代の頃、ウィーンに数年いてドイツ語が全然上達しなかったため、彼女の外国語読解力は私に比べると奇跡に近いと思っていたので、意外な答えが返ってきて驚きました。日本人からしてみても日本語は難しいと思っているのに、完璧に近い語彙力を持っている彼女に羨ましささえ感じていたのでした。「もっと本を読まなくちゃ」と言ってる彼女は、日本語による精神分析の書籍を読もうとしているのです。読みたいのはフロイトの「夢判断」と聞いて、彼女の意欲に脱帽でした。この子なら今からでもドイツ語を学んで、ドイツ語の原書でもいいのではないかと思ったくらいです。今日は陶彫の成形をした作品に彫り込み加飾を施す作業に明け暮れました。彫り込み加飾は陶土の表面を掻き出しベラで彫り込みを入れて、木ベラで形を整える作業です。いわばレリーフを作っているのです。丸彫りと言われる360度の立体に浮き彫りをするのです。丸彫りと浮き彫りが調和するように細工していきます。結構時間がかかり、周囲が見えなくなって、眼は陶土とヘラ先しか追わなくなっていきます。私はこういう状態を素材との対話と称していて、あっという間に数時間が経過してしまいます。心理学で言う「フロー」状態というのは、このことなのでしょうか。この状態に入ると自分の肉体等諸々の事情を省みることはなく、作業は思うようにどんどん進みます。自分でコントロールして「フロー」に入れるものではなく、明確な目的意識とその時の体調によるものかなぁと思っています。昨日と今日は午後2、3時間くらい「フロー」状態がやってきました。ただし、作業を終えた後で大変な疲労に襲われて、瞬時に燃え尽き症候群になってしまうことがあります。復活はできるので症状は軽いものではないかと思っています。

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