渋谷の「これぞ暁齋!」展

東京渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「これぞ曉斎!」展に先日行ってきました。幕末から明治時代にかけて活躍した絵師河鍋暁齋の絵画は、海外の美術館に収集されている作品が多く、まとまった作品がなかなか見られないのです。今回の展覧会もイギリス在住のI・ゴールドマン氏が収集したコレクションによるものです。「なぜあえて暁齋を集めるのですか」という日本人研究者の問いかけに「暁齋は楽しいからですよ!」とゴールドマン氏は答えたようです。確かに暁齋の描く世界は、現代の私たちから見ても楽しさ満載です。鴉に代表される鳥獣戯画、鍾馗や鬼、幽霊等の想像の産物、美人画や春画まで、幅のある多彩な世界を舞台に饒舌に語りかけてくる暁齋ワールドに魅了される人が多いというのも頷けます。しかもその面白さは海外にまで普及し、外国人の暁齋マニアも大勢いるのではないかと思われます。私も暁齋の卓抜とした描写力とともに奇想の巧みさに取り憑かれてしまった一人です。一緒に行った家内は、木枠だけになった三味線を骸骨が弾いている絵に抱腹絶倒でした。私は春画コーナーに心の底から笑いが込みあげました。図録によると「性行為は薄暗くじめじめした世界ではない。明るくおおらかな笑いの世界である。儒教道徳や時の権力が抑え込むことで、性があたかも罪悪であるかのように扱われたのは、支配する側の論理である。」とありました。暁齋は新しく生まれた明治政府の高官を揶揄した風刺画を描いたことで捕らえられて、投獄されたようです。前科者河鍋暁齋は日本で最高の絵師であったという事実。現代なら政治と芸術の論争があってもおかしくないのですが、暁齋ワールドの斬新さに時代がついていけなかったと見るのは私だけでしょうか。奇想の画題についてはもう一度NOTE(ブログ)に書いてみたいと思っています。

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