単体が集合する世界

朧気な全体像をイメージしながら、単体となる作品をひとつずつ作っていき、それらを集合させて、ひとつの作品にまとめる世界が私の得意とするものです。自分の資質もあるのでしょうが、昼間は公務員として働きながら、日々単体を制作する方法が自分に適した創作への道だったと言えます。まとまった時間は週末にしか取れず、週末にはそれなりの制作をやってきていて、毎日の制作は少ない時間で効果を生む方法が現行の集合彫刻だったのです。今は日々の制作はRECORDのみで、週末に陶彫制作が集中していますが、管理職になる前は毎日勤務時間終了後に陶彫制作をやっていました。日々の制作に対する労働の集積は、自分の習慣になり、さらに精神の安定が図られていました。アーティストによっては、一定期間をまとめて働いて収入を得た後、創作活動に入り、また働く方法をとっている人も少なくありません。自分は働きながら日々創作活動していく方法をとりました。どんな作品を作ろうとするのかで、アーティストの日常は変わります。私は日々単体を蓄積していく集合彫刻を考えていたので二足の草鞋生活を選びました。単体を集合させることで、架空都市をパノラマとして展開する作品が出来るようになりました。私は20代の頃、旅したエーゲ海で遭遇した遺跡の数々が造形イメージの根底にありますが、その後の二束の草鞋生活で、こうした集合彫刻が身についたといっても差し支えありません。集合彫刻は単体を接合するだけではありません。単体を拡散し点在させる方法もあります。「イサムノグチ庭園美術館」にある「石壁サークル」をひとつの作品と考えれば、単体同士が響きあう空間を創出させるのも集合彫刻と言えるかもしれません。可能性はまだまだ広がります。これが自分の世界にさらに伸びしろがあると思える瞬間なのです。

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