アール・ブリュットについて

アール・ブリュット(生の芸術)は、障害を持つ人が取り組んだ造形美術のことを言います。英訳では「アウトサイダー・アート」と称し、美術の専門教育を受けていない独習者だったり、民族芸術も網羅しています。今日職場に届いた読売新聞の文化欄にスイス人芸術家アドルフ・ヴェルフリについての記事が掲載されていたので注目しました。記事によるとヴェルフリは精神科病院の狭い部屋で制作することで命を繋いでいたという一文があり、障害を持ったが故に精神性が研ぎ澄まされていたとも思えます。障害を持つ人は全体を把握したり、視野を広くもつことが難しい傾向があります。その分、自己を掘り下げるパワーは常軌を逸していて、その力を芸術活動に注いだならば、凄い世界を創出して見せます。私は常々精神バランスを欠いた時に生みだされる緊張した世界に、高い芸術性を見ることができると思っています。私自身もデビュー作である「発掘~鳥瞰~」を作っている時は、食欲を失い、体重も落ち、何かに突き動かされる感覚を持ちました。幸いその時は管理職ではなく、公務員として末端の仕事に携わっていました。昼間の仕事も何とかやれていたのではないかと振り返っています。場面によっては自閉傾向も自分にはあるのではないかと疑いつつ、芸術家と障害者は紙一重ではないかと思うことも暫しあります。アール・ブリュット(生の芸術)は不思議なほど私の心に染み込んでくるのです。

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