自己満足の捉え方

自己満足をマイナス要素として捉えてはいけない、自己満足があるからこそ人は生きていけるのだと京都に住む版画家の友人から言われたことがあります。確かに自己満足というコトバを使う場面では、客観的評価ではなく、周囲から見れば本人だけが悦に入っていることが多いと思われます。表現されたパフォーマンスや作品を見ていて、鑑賞者に伝わらず、寧ろ恥ずかしささえ感じるモノがあることは否めません。それを自己満足と称して蔑む傾向もあります。でも表現活動の発端は自己満足にあると言っても差し支えないと思っています。京都の友人はそこのところを端的に言ったのでした。それが証拠に彼の版画はマイナス要素の自己満足とは思えない評価を得ているからで、個展では鑑賞者を常に惹きつけてやみません。私も自己満足の中で生きていると感じることが暫しあるのです。他人の評価を気にするより、まず自分が満足できなければ創作活動は面白いものではありません。自己満足が社会的評価と共有できている状態が、表現活動の醍醐味なのでしょう。それ故、作品を介して作者と鑑賞者がコミュニケーションを図る機会を作るため、発表の場を設定することになるのです。美術館や画廊、劇場やその他諸々の場所が発表の用途によって選ばれます。自己満足の客観的評価はそこで行われるのです。工房で制作途中の作品はまだ自己満足の域を出ません。作品によっては難解なモノもあります。見ていて虚無に襲われ、マイナス要素としての自己満足に浸っている作品は、鑑賞者にそっぽを向かれることもあります。難解だけれども鑑賞者が何かを感じ取り、作品の謎解きに挑むこともあります。これは自己満足がプラス要素として反応した場合です。自己満足の評価は大きく分かれ、そこで作品や思索の質が問われてくると私は考えています。

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