ダリの精神分析考察

現在読んでいる「シュルレアリスト精神分析」(藤元登四郎著 中央公論事業出版)の中で、ボッシュの次にダリが登場してきました。偶然にも東京で「ダリ展」を開催していて、今年の下半期はダリの世界に浸って終わりそうです。本書ではSF作家荒巻義雄の作品を通じて、ダリの生い立ちや精神分析を考察している箇所があって興味をもちました。それは生涯の伴侶となるガラとの出会いから、ダリの世界観が構築されていき、最後は名作「記憶の固執」の重要なモティーフである柔らかい時計を通して、ダリの精神分析を試みる内容でした。ダリの精神状態を示す文章を抽出して掲載いたします。「ガラは、おそらく聖母のようにダリに君臨し、支配している。このことは、精神的に未熟なオナニストのダリが母親的女性に依存しなければ生きていけなかったことを示している。~略~彼女と出会う前までは、ダリは精神的に幼くて口唇段階にあった。しかし彼は、そのおかげで乳歯が取れた程度の精神的な独立を果たすことができたのであった。~略~ガラの助けによって、ダリは、これまでまだ形のはっきりしなかったパラノイアック・クリティック活動を構造化して行うことができるようになった。~略~こうしてダリは商売熱心な、金に魂を売った芸術家となり、まさに資本主義の化身となった。~略~シュルレアリスムを唱える人々は、ダリに、自分の才能を利益に変えることしか念頭にない『ドル亡者』というレッテルを貼ったのである。」これがダリの生い立ちで、愛妻ガラとの関わりによってダリは良くも悪くも美術界の地位名誉を築いたのでした。次にダリの絵画を考察し、ダリその人の精神分析に迫る箇所がありました。「ダリは、柔らかいものと固いものとを結合するという思考方法でしか、人生を意味あるものにすることができなかった。すなわち、意味のない生の不条理を絵画の中で調和させることが、生の価値を肯定することであった。したがって、ダリのやり方は、生きていくための自然な吐息のようなものであり、生まれつきのシュルレアリスムであったことを示している。」

関連する投稿

  • 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
  • 「《逸楽の家》」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「3 […]
  • 「結語」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「結語」の「1 木彫と陶器」「2 親密な環境における彫刻」「3 […]
  • 「炻器におけるいくつかの彫刻的表現」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第4章 陶製彫刻と木彫浮彫(1889年と1890年)」の「4 […]
  • 「状況-思考の神秘的内部を表すこと」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第6章 タヒチからマルケーサスへ(1895~1903年)」の「1 […]

Comments are closed.