礼賛!彫刻は労働の蓄積

前からNOTE(ブログ)に何度となく書いていることですが、自分の彫刻は集合体で見せるため一気呵成に作ることが出来ず、陶彫部品をひたすら作ることに明け暮れています。先日見てきた「鈴木久雄 彫刻の速度」展(武蔵野美大美術館)では、私と同じような制作工程を経て、作品化している硬質で頑健な彫刻家の生き様を目の当たりにして、私は胸中が熱くなり、賞賛を惜しみませんでした。まさにこういう彫刻は、労働の蓄積によってカタチになっていくもので、古代の時代から名も無き寡黙な職人の作るものを、自分一人で追体験しているような感覚になるのです。作品作りに共通する認識を発見すると、私は勇気づけられます。ただ、鈴木久雄氏が羨ましいと思うところは制作現場と大学の教壇の間に距離がほとんどないところです。私の場合は職場と制作現場がまるで異なり、管理職という行政的立場にいる自分には、創作活動がかけ離れたものであることが残念でなりません。展覧会の図録に掲載された労働の蓄積と言える箇所を抜き出しました。「かれ(鈴木久雄氏)の場合、作品制作のためのあらかたの時間は部品作りに費やされるという。薄板を焼き、叩き、溶接することからはじめて、数千にもおよぶ規格化された部品をつないでいく作業の繰りかえしのなかで、根がひろがり、枝が伸びるように、全体のフォルムや構造がかれの中で徐々に具体化されていくのであろう。来る日も来る日もつづく部品作りは修行でお経をあげるようなものだ、と言って、かれは笑ったが、そのおそろしく手のこんだ作業工程に当てられて、ボーッと頭のかすんだ筆者は、近代彫刻というよりも、人為を尽くして人為を超えた何かへと捧げられた、古代ピラミッドか、仏塔か何かの建造現場に居合わせたような心持ちになった。」(松本透 著)というわけで「礼賛!彫刻は労働の蓄積」というタイトルは、自分にも向けたものであることをつけ加えておきます。今日は他人の作品に託けて自己応援メッセージを書いてしまいました。

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