「パラノイアック・クリティック」について

「パラノイアック・クリティック」とは何か、昨日から読み始めた「シュルレアリスト精神分析」(藤元登四郎著 中央公論事業出版)の最初に出てくるコトバです。精神医学の専門用語というのですが、全く聞き慣れないコトバです。本書からその部分を拾ってみると「パラノイアックは気難しい性格、妄想的、横暴」という意味だそうで、画家ダリは「パラノイアック・クリティック的活動を、妄想的現象の解釈的・批判的連合に基づいて非理性的な知識の自然発生的な方法」という意味で使っていたようです。随分長々とした定義です。本書第一部の「パラノイアック・クリティック」の章を捲っていくと、ブルトンが提唱したシュルレアリスムとパラノイアック・クリティックの相違が書かれていました。「ブルトンは『無意識が意識に先行する』というフロイトの無意識理論の忠実な信奉者である。したがって、超現実は現実そのものの中に含まれており、現実を超えるものでもなく、現実の外にあるものでもない。一方、ダリのパラノイアック・クリティックは、逆に『意識が無意識に先行する』という概念に基づいている。」ブルトンのシュルレアリスムは、無意識のオートマティスムに基づくものであり、ダリのパラノイアック・クリティックは、それにとって代わるものという意味で、やがてブルトンと袂を別つダリの主張が、本書の導入になっているのです。パラノイアック・クリティックをキーワードに本書は幻想画家の世界を紐解こうとするもので、私がずっと拘ってきたフロイトの精神分析学やそれを礎にしたブルトンのシュルレアリスムと視点も観点も異なる理論に注目したいと思っているところです。

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