木々との関わり

先日見た東京都美術館の「木々との対話」展で、私も彫刻の素材として木材を使っているので、これを契機に私自身の木との関わりを考えてみたいと思いました。私は生まれた時から木材が身近にありました。祖父は宮大工で棟梁を務めていました。実家はもともと農家でしたが、農業だけでは生計が立てられず、建築業を生業としていて、実家は常に職人が出入りする環境でした。鉋の削りカスや臍を彫った木っ端で、幼い私は遊んでいました。製材を立てかけた場所には近づくなと叱られた記憶もあります。父は造園業に転業しました。農作物を売るより、植木の方が実入りがいいと思ったのでしょうか、父は実家の田畑を植木畑に変えていきました。その頃、私は中学生になっていて、父の仕事を手伝っていました。他の職人仲間が、私のことを半端職人とからかい半分に呼んでいました。私は植木鋏を持たせてもらえず、専ら切り落とされた葉や枝の掃除をしていました。竹箒を振り回していたので、高砂とも呼ばれていました。枝に切った葉や枝が絡んでいると、カンザシを作るなと怒られました。枝をふるって全て地面にゴミを落としてから掃除をすることが教訓でした。そんな私は木に対して必要以上に緑を愛でたり情緒を感じることがありません。現在の職場で私の前任管理職は、施設内の木々を切るなと言っていたそうですが、私は逆の意見を持っていて、業者に思い切り枝を詰めろと指示を出しています。植木はそのまま放置すると、後になって手入れや管理が大変になるという職人的発想によるものなのです。木材は自分にとってドライな関係であろうと思います。それでも身近な素材として私は彫刻に木を利用しています。木のもつ情緒に流されないように、突き放した存在として木を扱っているつもりです。

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