上野の「木々との対話」展

先日、東京都美術館で開催されている「木々との対話」展に行ってきました。副題に「再生をめぐる5つの風景」とあって、再生というコトバがキーワードになっている企画展であることが示されていました。当初別の展覧会を見たくて訪れた美術館でしたが、地下展示室に國安孝昌氏の夥しい数の丸太を組んだ作品が圧倒的な存在感をもっているのを見るにつけ、それが気になって仕方なく、つい足を踏み入れた展覧会でした。展覧会を見た結果、刺激的な現代作家ばかりで大変面白かったという印象を持ちました。前述の國安氏の陶ブロックと丸太による巨大構築物、細密な植物を彫ってさりげない空間に展示する須田悦弘氏、繊細で優美な幻想動物を彫る土屋仁応氏、人間の半身像に幻想を合わせた舟越桂氏、老木を素材に風景を取り込んだ田窪恭治氏、5人それぞれが独自の世界観を得て、確固たる軸足をもって発信し続けるパワーに、自分も勇気をもらいました。副題にある再生とは何か、図録にあった文を引用いたします。「ここで問題にしたいのは『芸術による』地域社会や経済の再生ではない。端的に、『芸術における再生』のことである。~略~芸術における再生とは、人それぞれの芸術体験における、今までの自己の揚棄、すなわち古いものが持っている内容のうち不要な要素を廃棄して、積極的な要素を新しく高い段階として保持することであると思う。」(山村仁志著)現代作家たちの作品は生々しく豊かで、あらゆる意味で同時代性を感じさせるものでした。私も自作に木材を使うことがあり、その関わり方を考えさせてくれました。

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