ブランクーシとジャコメッティ

東京都美術館で見た「ポンピドゥーセンター傑作展」の中で、どの巨匠に注目したかを問われれば、私は疑うことなく自分自身の彫刻を考える上で、最も影響を受けた2人の彫刻家を選びます。ルーマニア人彫刻家ブランクーシとスイス人彫刻家ジャコメッティです。本展では代表年と代表作品と芸術家のコトバが展示されていて、奇しくもジャコメッティは私の生まれた年の代表になっていました。ブランクーシの作品は「眠れるミューズ」が展示されていました。磨かれた金色のブロンズ、卵型をした彫刻で一度は図版で見たことがある有名な作品です。「呼吸するように創造することができたら、それは真の幸福でしょう。そこに到達すべきなのです。」というブランクーシ自身のコトバが添えられていました。創造することは生きることと同じという理想的な芸術の在り方が語られていました。ジャコメッティは「ヴェネツィアの女Ⅴ」が展示されていました。シュルレアリスムから出発したジャコメッティが到達した針金のような人体、それは見えたままのリアルを追求していくうちに塊を削る結果になりました。「私に見えるとおりに1つの顔をかたちづくり、描き、あるいはデッサンすることが自分には不可能だとよくわかっています。しかしそれこそが私の目指していることなのです。」という、いかにもジャコメッティらしいコトバがありました。ゴールなき追求がジャコメッティの姿勢です。芸術を生きること、芸術を追求すること、芸術を純粋に追い求めるのには、現代社会では難しい局面もありますが、これは気持次第でどうにでもなるだろうと考えます。改めて巨匠2人から珠玉のコトバを頂きました。

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