関西出張① 木造建築雑感

関西出張の第一日目は奈良県でした。久しぶりに法隆寺に行きました。飛鳥時代の仏像や世界最古の木造建築で知られる法隆寺。「釈迦三尊像」や「百済観音像」にも無沙汰を詫び、嘗て何度か拝観したきりりと引き締まった御姿を改めて鑑賞しました。今日は梅雨の中休みで晴天になり、気温34度という茹だるような暑さになりましたが、仏像の周囲は緊張感が漂い、静謐な魂が宿っているように感じました。法隆寺の見所は木造建築で、木材を知り尽くした巧たちによって幾星霜も存在を保たれている素晴らしさに目を見張りました。現代の鉄筋コンクリートはこれに敵いません。今回も久しぶりに木組みをしっかりと見てきました。法隆寺伽藍の建築は百済から伝来した形式であることは知られていますが、百済の仏教建築は大陸(中国)から来たものであるなら、法隆寺伽藍建築のルーツを探るべく、それを中国やインドに求めることであり、また円柱が真ん中に膨らみを持つエンタシスは、遠くギリシャのパルテノン神殿にも見られる特徴であることから、シルクロードを経由した可能性も否定できません。ただし、西欧から渡来した形式ならば、途中経由した国々にも同じような痕跡があっても不思議ではありません。法隆寺だけに見られる特徴として捉えれば、日本独自に考えられたものではないかとする説もあります。ルーツはどうあれ現存する世界最古の木造建築は、何という美しさを私たちに見せてくれているのか筆舌に尽くせません。昼食に柿の葉寿司を頬張ってから法隆寺を後にしました。この日は奈良公園にも立ち寄りました。私は奈良国立博物館で開催されている「和紙展」を見ましたが、古い時代からの技法や道具の展示が多く美術的にはあまり興味が湧きませんでした。ただし、炎天下を歩いた後だったので空調の効いた展示室で息を吹き返すことができました。地下にあるギャラリーショップで「アジア都市建築史」を買い求め、法隆寺で頭を過ぎった建築的疑問を解明しようと思っています。明日は京都を見て歩きます。

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